上の廊下をめざす

山行実施日;2011.08.16-20
参加メンバー;Mi.K、Ti.S

今年の2月頃のこと、Mi.Kさんに今年ぜひ上の廊下にいきたいのだけれど、お願いできませんかと話をしてみた。昨年計画をたててみたが、いろんな事情で実行できなくなり、この夏ぜひとも計画し行っていただけないかとたのんでみた。返事はオーケイだった。以前から、ここはクライミング要素はなく、泳ぐことと渡渉の連続だよと聞いていた。
だんだん話しが煮詰まり、日程はお盆があけた直後ときめ、列車時間や諸々の手配は一任されて行くことになった。

8/16

お互い大宮と大阪からの出発となるので、なるべく時間に差がなくまちあわせできるように考えるとMi.Kさんは長野新幹線で長野~篠ノ井線で松本駅、私は始発の東海道新幹線で名古屋~中央線で松本駅まで行き、大糸線南小谷行きのホームで待ち合わせることにした。10分ほど先に到着していたMi.Kさんから携帯に電話が入り無事合流する。車内は混んでいて座れず信濃大町まで約1時間立ったまま、今日の日程を確認しあいながら過ごす。 駅から20分ほどの待ち時間で扇沢行きの路線バスに乗れた。

トロリーバスに乗り継いで、黒部ダムに到着したのは正午近くになった。ダム付近は登山目的の人もいるが、多くは観光目的のお客でごったがえしていた。エメラルドグリーンの湖水を眺めながら、おむすびを食べ一息つく。今日は平ノ小屋まで行きそこに一泊の予定なので、ゆっくり歩いても無理のない行程である。平ノ小屋・針の木方面の看板を確認していよいよ歩き始める。ザックが重い!お互い顔を見合わせがんばろうぜーの意思表示をする。トンネルを過ぎると、黒部湖周遊道になり、向かって左側に黒部湖を見ながら歩いていくと、1時間たらずでロッジくろよんに到着した。ここで休息していると、昨日剱岳に登り、早朝剣山荘から出発してここまで来た男性と会った。天気は悪く展望も最悪でしたとのこと。明日からの天候がちょっと心配だ。

平坦ではあるが道幅の狭いところを慎重に歩いていく。ポツリ、ポツリと雨が降ってきた。暫くこのまま行こうと歩くが、だんだん雨が強くなり雨具を着けて歩きだす。足元の木の根に注意をしながら進み、また丸太の梯子も一歩、一歩踏み外さないように登り、下りを繰り返していく。登り100段、下り100段の気の遠くなるような長い丸太の登り下りがあり背中の荷物がずっしりと堪える。黒部湖周遊道というから道は湖に沿って続いており、入り組んだ湾を迂回していくからなお時間もかかる。雨は更に強くなってきたが、空をみると晴れ間も見え天気は少しづつ良くなる感じもした。

更に1時間あまり進むと雨もおさまり、前を歩くMi.Kさんが、「立派な虹だよ!写真に撮れば」といってくれたので、あわててデジカメをとりだしたが、だんだん虹が薄くなりせっかくのシャッターチャンスを逃がしてしまった。残念!木々の間から見える黒部湖をバックに大きく架かる立派な虹だった。更に丸太の梯子を登ったり、下ったり何度あっただろう。最初は、梯子の数をかぞえていたMi.Kさんだったが、途中でかぞえるのをやめてしまった。(笑い) Mi.Kさんは以前来ているので、記憶をおこしてみると、ずいぶん道が崩壊してしまったなと言っておられた。中ノ谷に架かる丸太橋をわたり、対岸の道にはいりまたアップダウンの登り下りを繰り返して歩く。小屋はもうすぐのはずと思ったが更に1時間は歩いた。Mi.Kさんから、「渡し場がみえたよ」と声がかかり、ようやく小屋に着いた。荷物をほどき、とりあえずビールを飲み一息つく。小屋の外で宿泊者たちと話しをしたが、明日は雨になるらしいとのことで皆、以降の行動を考えていた。五色が原に行こうか、黒部ダムに戻ろうか‥‥。

我々は予定どおり明日午前の渡し船で渡り、奥黒部ヒュッテを目指すことにした。同室の男性は幾日も平ノ小屋に泊まっていて魚つりにあけくれているらしい。それぞれに楽しみがありその話しを聞くのもまた楽しいひと時である。夕食後焼酎を少し飲み早めに就寝する。夜半雨の音で何度か目がさめた。

8/17

朝から雨で少々気落ちするが、10時発の渡し船に乗り針ノ木谷渡し場に行く。ここから3時間で奥黒部ヒュッテに到着の予定。
今日入渓するかは天気をみて考えることにする。歩きはじめてほどなく雨が落ちてきた。道幅がせまいので慎重に歩く。このあたりもあちらこちら崩壊した跡があった。梯子を踏み外さないように一歩一歩登り下りに神経を使って歩く。アップダウンの多い道で今日もまた昨日と同じ。しかしよくお腹が空き、こまめに食べないとバテそうで何度か休憩しては、なにかしら口にはこんだ。今日は入渓しないと途中で決めたのであわてずに行くことにする。雨が止んでウグイスの鳴き声がよく聞こえる。富山県警のヘリ「つるぎ」が飛来してくるのが見えた。「何かあって救助に向かうのかな。」と顔を見合わせる。奥黒部ヒュッテ前のテント場には14時半に到着し、幕営したのちぬれた雨具やザックも干して小屋に明日の計画書を出しに行ったが、今夜から雨で水量も多く沢行きは止めたほうがいいと主人にいわれる。外のベンチにいる人たちとも話しするが、赤牛岳に登った人は天気が悪く展望もなにも望めず戻ってきたらしい。我々と同じく明日上の廊下にいくつもりの2名も東沢に変更するか、もしくは黒部ダムに帰るか迷っていると言う。とりあえず無理をせずに判断しようとMi.Kさんに任せて夕食後焼酎のお湯割りを飲んで就寝する。

8/18

夜中テントをたたく雨の音で目がさめて、それからあまり寝つけずその上、雨水が下から進入してきてシェラフカバーの足元やゾウ足カバーもぬれてしまい、明け方タオルで床そうじとなった。昨夜10張程はられていたテントも1張あるだけで皆暗いうちから行動を開始したようだ。  朝食を済ませ、テント撤収して支度を整え出発する。以前Mi.Kさんが行ったように東沢沿いに下降して黒部川本流にはいる。「水量がかなり多いな」 Mi.Kさん考えている様子がうかがえる。とにかくいってみようと決めていきなり腰まで水に浸かっての渡渉となる。確かに水量多く雨もまた降ってきた。ビデオカメラとデジカメを交互にだして付近を収める。暫く歩いてMi.Kさんが「断念して戻ろう」と言われる。私も「そうですね」と答えた。遭難の危険が大きいと思った。残念だが仕方ない、こんなに水量がおおくては先に進むともっとマズイことになるかもしれない。決めたらその後の行動は早かった。奥黒部ヒュッテの主人にその旨を伝え読売新道を平の小屋まで戻ることにして、支度を替えて昨日きた道を針の木谷渡し場にむけて歩き出す。14時半の渡し船に乗ることができて平の小屋に今夜もお世話になることにした。

例の同室だった釣り人はまだ宿泊していて、他の仲間と平の小屋の主人も交えて夕食後は宴会となった。小屋の主人は佐伯さんといって職業釣り師の祖父から小屋を継いで3代目で、スキー、クライミング、釣り、なんでもこなす人である。スキーはかのミッターマイヤーと滑ったことがあると言い、谷川の岩場の困難なところもほとんど登り、釣りもいつも100匹ほど釣る名人らしい。しかもお酒が強く一晩に2リットル飲むこともしばしばあるらしい。人工壁のホールドももっていて話しは大変おもしろいが、短気なところもあり宿泊客を怒鳴って夜中に「金は返すから出て行けー」と今まで3人のお客に言ったことがあるらしい。Mi.Kさんが「またなんでお客さんにそんなことを!」と聞くと、1階で機嫌よく宿泊者と飲んでいると2階から「今何時だと思ってるんだ!」といわれたことに怒ったらしい。それも如何なものかと思ったが、Mi.Kさんと話しが合い、10月10日過ぎるとほとんどお客はこなくなり女房と淋しく二人でいるから、遊びにきてくださいといわれ、また紅葉もきれいだから是非にとのことだった。小屋の奥さんはつきあっていられませんと早めにさがり、私も眠気がきたので先に失礼したが、あくる日Mi.Kさんに聞くと相当遅くまで飲んでいたらしい。

8/19

結局黒部ダムまで戻ろうということになり準備をしていると、朝6時前に黒部ダムに向かって歩いていた5人の宿泊客が戻って来た。訳を聞くと中の谷に架かる丸太の橋が流されてむこう岸に渡れないとのことだった。平ノ小屋の主人は眠そうな顔で10時に針ノ木谷渡し場からやはり上の廊下を断念してこちらに帰ってくる登山客がいるので、その迎えが済んで対応するとのことであった。我々は予定を変更して五色ガ原から立山、室堂経由で帰ることにして、展望は望めなさそうな五色ガ原に向かって出発した。刈安峠、五色ガ原までずっと雨で展望は最悪だったが、五色まで来ると花が所々に可愛らしく咲いていて、ビデオなどにおさめた。テントを設営して泊まることも考えたが、この雨ではつまらないので五色ガ原山荘に泊まることにした。山荘の主人と話しをしたが、昨日は滝のような雨で、ここから上の廊下に行こうとしている登山者はすべて断念して戻るようにしてもらったとのことだった。お風呂に入り、のんびりと足をのばして明日は獅子岳、竜王岳を登り、浄土にまわって帰ることに決める。

8/20

ここの朝食時間は5時厳守でみんな一斉に食堂にあつまる。予約していたお昼のおべんとうを受け取り山荘をあとにする。自然保護のためにつけられた木道を歩く。ザラ峠まで高度200m下りそれからは登りが続く。峠を過ぎてからまた雨が強くなる。お昼ごはんを食べていると、登山客が大勢下ってきた。みな五色ガ原にいく人たちで今夜は山荘に泊まるとのことだった。せっかくいい天気を期待してきた人ばかりでがっかりですと言っていた。獅子岳、竜王岳もお天気ならよく見えるはずなのだが、残念だった。

富山大学の研究所の茶色の建物が見えここで休息する。ハイマツに雷鳥が5羽ちょこちょこしていてカメラ、ビデオに収める。浄土に向かわず、一の越山荘をまわって室堂まで行く。一の越から雄山をみあげると、大勢の登山客が登り、下りしていた。

室堂から、富山駅直通のバスがありそれに乗って駅まで帰る。昨年9月、今年5月とここ3回立山方面に来ているが、今回はお天気に恵まれなかった。富山駅で食事し、ビールで乾杯して、また機会があれば平ノ小屋に紅葉を観にいきたいですねとMi.Kさんと暫し話しして、北越急行、雷鳥と改札で別れて帰路についた。

今回、お天気に恵まれず残念でしたが、Mi.Kさんから学んだことたくさんありました。ありがとうございました。またよろしくお願いします。(Ti.S記)