十勝岳・トムラウシ山縦走(北海道) 雲上の妖精達に抱かれ夢幻の世界へ

山行実施日;2012年7月25日~29日
参加メンバー;Hi.T、Ry.K、Mi.M、Ky.T、Ka.I

大雪山の高山植物見学に誘われ参加する事にする。折からの低温注意報は通過し、初日を除けば天候も安定しそうである。

【1日目】7月25日晴れ・曇り

大宮を早朝出発し、高速も非常に順調で予定より早く到達する。余裕で朝食とか取れると思ったがさにあらず。今話題のジェットスター便でのフライト、就航してからまだ1ヶ月も経っていないせいか手続きに時間ばかりかかり余裕のはずがギリギリとなる。ジェットスター便はあとから参加した企業のせいか空港の端から端を移動させられる。また成田は国際空港のため空港内に入るにも証明書を保持していないと入ることができない。成田空港から新千歳空港へと向かい、美瑛駅からタクシーで食料確保にスーパーに向かう。登山口手前には湧き水がこんこんと湧き、水を確保して駐車場へ行く。駐車場は10数台駐車可能で、既に2台駐車しているが誰もいない。早速テントを張り宴会へ。

 

【2日目】26日曇り・霧雨・雨・晴れ

まだ5時前なのに灯り無しで歩ける、流石に東経と緯度が高いのか。霧雨の中を登山口に向かう、ポストに計画書を提出し緩やかな登山道を進む。そこかしこから鳥の鳴き声が聞こえ、霧雨と薄日を繰り返す天候の中での山行となる。巨岩と赤松帯が織りなす天然公園を通過、巨岩の急登を這い上ると岩の間には高山植物が所狭しと咲き誇る。

朝露に濡れ俯き加減となった山の妖精たちは、朝日に照らされ輝きを増している。強い日射しが時折見え隠れしたり強い雨に体を打たれる事もある。残念ながら美瑛富士も霞にけむり望む事が出来ない、天気がよければ前方に望まれる事だろう。

美瑛富士の北斜面には雪渓が残り、雪解けの斜面には花畑が拡がっている。途中数人の登山者に追い抜かされながら、美瑛富士避難小屋に到着する。

小屋はけっこう広く、10人ほど泊まれそうではある。先客1人とシュラフ2人分が敷かれている。直ぐに数人の登山者が小屋に集合してくる。

天候不良のためコースの再吟味を行なうが決定打がなく、ともかく雨具を装着し出発する事にする。少し歩くとまた強い日射しが降り注ぐ、とても雨具を来ていられないし天気の安定を予感して雨具を脱ぐ事にする。

後ろを振り返ると美瑛富士と美瑛岳が綺麗に望まれ、美瑛岳の雪渓が鳥のように見える。

ガレ場の急登を登ると「ナキウサギ」の声がそこかしこから聞こえる、「いた、あの岩の上」ナキウサギは日光浴しているようで岩の上で暫くたたずんでいた。(後日確認したら我々の方を注視し見据えているようであった)

石垣山は巨石を積み上げた様相の山頂であり、東側を巻いてベベツ岩に向かう稜線はたおやかな山脈を連ね険しさを感じられない。この付近からは赤茶けた溶岩が点在する登山道となる。ベベツ岩山頂にも高山植物が咲き乱れ、今が丁度開花の良い時期か?

やがてガレ場の急登をオプタテシケ山に向け登攀するが、気温は上がり汗が絞られる。「少し影にならないかな」!雨の時は晴れれば良い、晴れの時は曇れと都合の良い事を言いつつ山頂へと向かう。それでも山頂付近は風が冷たく、ちょっと休息すると直ぐに体が冷えてくる。巨岩を巻いて山頂にて記念撮影するが、オプタテシケ山の標高は「2012m」今年の年号と同一。鞍部付近は花々のさざ波があちらこちらに垣間見られる様になると直ぐに、ガレ場で急傾斜の下り道が始まる。登山道の両脇には花々が出迎えてくれるが、見とれていると足元をすくわれ尻持ちを衝く。歩き始めからすでに11時間ほど経過し重い荷物と疲労で踏ん張りが利かない、

滑る回数が増してくる。この状況でも高山植物に見とれ、称賛を与えその都度元気を回復する驚愕の人たちがいる。

時間も押し迫ってきたが急傾斜で焦りは禁物と休み休み進む。やがて雪渓が見え出し水の流れる音も聞こえてくる。水の心配はなさそうで一安心。

やっとテントを張れる場所を確保し設営する。水は直ぐ近くから調達が出来た。

宴会をしていると異様な臭気が!ちょうど換気口の付近から臭う、臭は数分で消えたがあの強烈な異臭は?「その裏は笹があるから熊なら音がするよ」しかし強烈な臭さではあったが?地図によると「熊出没注意個所」ではあるが?

【3日目】27日曇り・晴れ

曇っているが天気は安定しそうである。昨日の疲れを取るため今日は、コスマヌプリ・ツリガネ山を経て三川台にてテントを張る事に変更となる。

登山道は笹の枯葉でしつらえた絨毯が一面にほどかされ、下草も綺麗に刈り掃われた直線の登山道が延々と続く。この後、松葉の絨毯に変わり緩やかな登りを繰り返す。鳥たちの綺麗な鳴き声に包まれ我々を歓迎するかのように聴こえる。振り返るとオプタテシケ山が

富士山のように裾野を拡げ、オプタテシケ山の左(南方向)側後方には境山・下ホロカメトック山と思われる山容が雲海の中に浮かんでいる。

巨岩のカブト岩を過ぎるとツリガネ山とトムラウシ山が遠望できるようになる。

小さなアップダウンを繰り返し、ツリガネ山北西の尾根に到達する。ここの視界は良く、三川台・十勝オプタテシケ山縦走コース等々が一望できる。北西は切り立った岸壁が切れ落ち、吹き上げる涼風が非常に心地よく疲れを癒される。このまま昼寝でもして一時を過ぎしたくなる。

三川台へはガレ場の急傾斜を下り鞍部へと進む、途中から赤土に変わり樹海のトンネルが現れ長い鎖が施されている。前方に登山者を見つける。オプタテシケ山からは初めての登山者との遭遇、2人組で次はソーラパネルを背負ったソロ。いろいろな人がいる。

三川台でテント場を見つけ設置しようとすると「そこでテント張るの!草を刈るまで待って」ここ数日天気が良さそうなので

登山道の下草刈りに作業員が入ったようだ。どうりで来た時の登山道は整備が行き渡り快適に歩けた訳だ。

テント設置後飲み水の調達に行くとそこは花園!みんな水筒以外にカメラを持ってき水場までなかなか辿り着けない!雪渓の雫は冷たくビールが有れば!

明日の予報は低気圧の通過、それる事を祈るが。

【4日目】28日曇・晴れ・強風雨

三川台は広い平地で天候が悪いと迷いかねない場所である。十勝岳・オプタテシケ山縦走コースは北面が広々とした花畑、南面は切れ落ちたカール状の稜線が続く。ナキウサギの声と共にシマリスが朝の挨拶に現れる。カールに残る雪渓から登山道に駆け上がり、我々の数十メートル先で愛嬌をふるう。途中、北大の植物学の先生にお会いする。数人で調査中との事で、南沼にテントを設置している。南沼に到着するのを待っていたかのように天候が怪しくなる。急激に気温が低下し、南沼の魅惑的な写真を撮ることもできず慌てて雨具を着用してトムラウシ山へと急ぐ。直ぐに強風となり小雨が混じり出す。南沼からは急登となるが少し登るとキャンプ指定地に着く。北大のテントが非常にいい場所に設置されている。平坦で直ぐ近くに水場、これ以上いい場所は無いだろう。

トムラウシ山へは岩場の急登を登攀する。天気はさらに悪化し烈風となるが南からの追い風であり、雨が降っていないのが幸いではある。今日は土曜日、流石に登山者が増え出し数人に抜かされる。

この山はイワブクロ山?と見誤るほど咲き誇っている。

風は弱まることなく吹き荒れ体のバランスを崩しかねない。

やっと山頂、風が弱まった!山頂には数人の登山者がくつろいでいる。記念写真を撮って小休止すると直ぐに大粒の雨粒が落ち始め風もまた強まり出す。

急いで下山にかかる。巨岩の登山道を駆け下りる途中で山頂に登る登山者とすれ違う。岩場は迷いやすく注意が必要である。やがて北沼に着くが、強い風に煽られた波しぶきが海岸のように押し寄せる。北沼を過ぎると遮る岩陰さえない、広々とした平坦のガレ場を通過する。風は益々烈風となり身体を支えきれにくくなるが稜線でないのが幸いである。

南沼まではTシャツ1枚だったのに、長袖のシャツと雨具の上下を着込んでの行動でも熱さを感じない、急激に冷え込んでいるのか?

ここでガスや雨が降っていると、迷いかねない場所である。急傾斜の岩場を下ると風を遮る岩陰があり一息できる。此処からは暫らく岩場が続くが、そこかしこに真新しい赤テープが設置され進路を指示してくれる。ナキウサギの声も岩場のあちこちこちからコダマする。日本庭園付近の花園も見事で風もさらに弱まり一休み。

疲労が激しいためヒサゴ沼によらず直接ポン沼方面に向うこととする。天沼で水を確保し化雲岳へ向う、此処から暫くは広々としたおやかな稜線の木道となる。

ヒサゴ沼分岐で休息を取り、化雲岳の急登に備える。西からの風を左側に受けガレ場の急登を登る、傾斜が穏やかに成りだす頃ヒサゴ沼からの木道と合流する。

烈風と雨足がますます激しくなり化雲岳山頂に到達するころには、視界も利かなくなり下山方向を見失いがちとなる。烈風を避けられるハイマツ間にテントを設営する。

【5日目】29日 曇・晴れ

風が弱くなり、多少のガスが出ている程度の朝を迎える。

緩やかなアップダウンを進むと、目の前には無数の妖精達が視界に飛び込み身体を抱かれる。雲上の花園は延々と続き、昨日とは打って変わった夢幻の世界のようだ。

やがてポン沼に着くが、小化雲岳は霧に閉ざされ垣間見ることができない

第二公園手前から第一公園までは昨夜からの雨により、登山道が沢となり滑りやすい下山を強いられる。第一公園からは木道となるが直ぐに急傾斜の下り道となり足へのダメージが倍加される。忠別川に注ぐ敷島の滝音が聞こえ出す頃穏やかな稜線となり、羽衣の滝を望むことができる。滝見台に到達すると残すところ小一時間、ツヅラ折れの急斜面を一気に下る。

大自然の懐に抱かれていたが俗世間の煩悩が頭をもたげ出す。温泉!ビール!カツ丼!

最後のご奉公と急斜面を下るが、膝も限界に近づくころ天人峡温泉に到達する。天人閣では「食堂はあと40分で終了します」温泉に入らないとビールは飲めない、ビールは諦め温泉に入ることに。入浴後缶ビールで乾杯。食事は美瑛駅にお預け!タクシーを早めに出るが駅前の食堂は全て準備中、仕方なくコンビニでの缶ビールと弁当で我慢する。

後日談:エキノコックスを警戒し飲料水を煮沸するがまが抜けている!煮沸した水を汲んできたボトルにそのまま入れたら、汲んできた時に残った水や浮遊物は無処理のままの状態である。  (Ry.K記)

高峰に咲く花々

今夏も色々な花に出逢うことが出来ました。色あざやかな花、そこでしか咲いていない花、見頃にピッタリと出会えた花、等々。

6月の樽前岳のタルマイソウ。活火山の礫地に咲き、この山で発見され名付けられたという。大雪のイワブクロより赤味があるかしらと感じたが、咲き始めの初々しさがステキでした。

アポイ岳のアポイクワガタ。清々しいブルーの色が雨にぬれ何とも可愛かった。その他アポイアズマギク、アポイゼキショウ、雨にもめげずオレンジイエローのエゾコウゾリナ、30cmもあるオオサクラソウ、お目当てのヒダカソウはまぼろしの花でした。

7月1日、八ヶ岳の横岳にツクモグサを探しに。雪どけが遅かったのか稜線にあがると目の前にチョウノスケソウ、オヤマノエンドウ、ヨツバシオガマ。白・青・赤と満開のお花畑でした。小雨の中はいまわるようにツクモグサを探す。岩の陰やガケの下など。ありました、花時は過ぎたようですが雨・風にふるえて岩の上に、見落としそうな所に何本かの花々が。来年またお天気の日にネとサヨナラしました。

7月15・16日、北岳へ。今年こそはと何度目かのキタダケソウを探しに。早すぎたり遅すぎたりと中々あえない花でした。7月も半ばまさかの花に逢えました。昨日も今日もさっきまでの悪天が、八本歯のコルに着いたあたりから太陽と青空と富士山が現れて、崩れ落ちたハシゴの向こう側に5mぐらい、上から下までキラキラと光る白い花々。なんて清らかな姿と見とれてしまった。

7月25日~29日、北海道へ。オプタテシケ~トムラウシ。長年思い続けてきたあこがれのコース。念願かなって花の海におぼれてしまいそう。

まずウコンウツギから始まり美瑛富士小尻の周りのチングルマ、イワギキョウとチシマギキョウ。あまり見ないリンネソウ(この後ずーっと天人峡までお供してくれました)小さなテンビンのようです。オプタテシケ山頂から双小池までの花畑のあっとうされそうな花の量。ウサギギク、ハクサンイチゲ、チングルマ、エゾコウゾリナ。三川台のテント場も負けずに花盛り。残雪の斜面のとけた所から水場にかけてエゾコザクラ、エゾツガザクラ、エゾツツジ、ハクサンイチゲ、エゾノリュウキンカ。人が少ないってこんなにも清々と大きく咲くものかと。

翌朝の一番の花はタカカネバラ。朝露でより一層あでやかに輝いていた。ミソガワソウもあまりの花つきの良さにびっくり。いよいよあこがれの黄金ケ原の花畑。広い、何しろ広い。トムラウシは雲の中。時折の雨と風。一面のイワイチョウ、秋には黄金色になるのでこの名がついたとか。ウサギギク、タカネシオガマ、エゾノトウチソウ、ウスユキトウヒレン、ミヤマヒコダイ、エゾサマニヨモギ。登るにしたがいチシマザクラ、コメバツガザクラ、ウラシマソウ。振り返ると池糖とどこまでも続く花々は風に揺れて見送ってくれました。

最終日の花はエゾキスゲ、ギボウシ、ワタスゲ、メアカンキンバイ、ミヤマキンバイそしてコマクサ。化雲の花畑はチングルマのつぼみ。満開そして花穂になるまで、海のように波のように、強い風にゆれながらどこまでも続いていました。 (Mi.M記)