入道沢・八海山新開道(越後)たび重なる滑落に身も心も憔悴

山行実施日;2012年9月14日~18
参加メンバー;日Hi.T、Ma.A、Ry.K、Ky.T、To.U、SaH、Se.O、Sh.S、Ru.T、Sa.H

【1日目】平成24年9月14日(金曜日)晴れ

恋ノ岐へと向かう途中、「道の駅」で深夜の入山祝いが盛大に執り行われる。一升瓶を2本抱え、ビールなど飲み止みそうにない。もう今日から入渓するのに飲みすぎだよな。私は今回で2回目の沢でありアルコールは控えめにし早めに就寝する。4時起き?起きられるのか?

【2日目】平成24年9月15日(土曜日)晴れ

やはり寝坊、予定時間を40分ほど過ぎての起床。二日酔い気味での出発となる。銀山平温泉で林道にゲートが設けられている。土砂崩壊のため通行禁止。

緊急打ち合わせにて入道沢に決定。車3台で広掘川河原駐車場に向かう、途中間違った道を進むがこちらの林道も通行止め。逆に通行できると間違った道に入りこむ所であった。早めにメインルートに戻る。駐車場はさらに奥と思われるが路肩に駐車する。日が射して暑い、準備中に汗が流れる。たまらず川へ、のどかな陽気に和気あいあい水風呂としゃれこむ御仁も。

入渓時間が遅いのでタ―プ設営場所を探す、入道沢を右に少し上がった所、右岸側の高台に草ベットをしつらえタ―プを張る、焚き火を熾し宴会の準備。盛大な宴会にボルテージが上がる。夜間に雷雨がし出したが、雷鳴は離れて聞こえる。

【3日目】平成24年9月16日(日曜日)晴れ 

ビバーク地点から少し下り、入道沢に戻る。ここからは岩場となり、小滝が連続する。南方面には巻機山も遠望が利く。「雪渓だ」正面には雪渓が残り、沢は東方向に屈曲し2段の滝が現れる。

初めの滝は右岸側を登攀するが、次の滝はロープを固定使用し順次登攀する。右岸側の法面から登攀し、途中から沢寄りにトラバースし直登するがトラバースが上手く出来ずに振られ皆のため息を誘う。

ここを抜けると3~6m程度の滝が連続する。数か所ザックだけを引き上げ、空身で登攀をする時もある。ザックを上げる時Hi・Tが、次「Kさん上がってザックを引き上げて」。水を含んだザックの重い事、10本もザックを上げると手に豆も出来てくる。おまけに握力が無くなる。下から見上げて左に屈曲した3段の滝が現れる、初めの滝は4m程度で深そうな釜がある。

Ky・Tが先に進む、左岸側から取付くが直ぐに滑落釜に落ちる。沈み具合から2m程度はありそうな釜だ。数回繰り返しクリアーして行く。私の番、最初の滝をやっと登ると2m程度のナメがある。ここも左岸から登るが、右岸側に移動する時に足を滑らせナメの流れに呑まれ、ぬれ鼠!幸い下段までは滑落しないで止まる事が出来た。息を整え今度は右岸側から取付く、上部の滝は2m程度でSがお助けロープを出している、攀じ登りホットすると目の前には10m程度の滝と雪渓が覆いかぶさってくる。またか!Sが偵察に行くと、古木を利用して登れない事もないが!

Hi・Tが上がって前方を見ると。「アリャ!」とため息交じりのあきれ顔。ここは高巻きする事に決定。右岸の法面を登攀し、懸垂下降で沢に戻る。法面は草付きでおまけに非常に脆弱なガレ場。滑って登りにくい!途中で沢側に滑落する、再チャレンジを行ない中間地点まで登ると大岩で進退きわまる。どうするか、足場がない!左右を確認して上体を岩に預けて攀じ登るが、滑る!握力が戻らない、なんとか登攀するがここから下降地点まではさらに滑って一苦労であった。 懸垂下降の指導をAから受けるが、懸垂下降器を使用しての下降はこれが初めてだった。

藤坂ではハーネスに直接8の字で固定して、5m程度の懸垂しか経験がない。懸垂下降は約20m程度か。「上流側に曲がりながら下降して、下流川だとまた滝に逆戻りだよ!」。ゆっくり下降するが握力もなく長い時間に感じる。上流側に下降するが、どうしても下流側に体が持って行かれる。下からSが「そのまま真直ぐで大丈夫」。やっとの事で下降しホットすると、前方には大きな雪渓が控えている。

雪渓の冷気が心地よい。「雪渓は氷の塊、落ちたら潰されるよ!また爆風が凄いから気をつけて」この先をSが偵察に行ったが適当な場所が無く、今日はここの左岸側でビバークとなる。岩場で落石が心配だが場所がない、直ぐにビバークの準備。法面上部には4~5人寝れそうな平坦場所があり、女性用に確保する。男性陣は下段の岩の間にタ―プを張り傾斜した岩の上にビバークを行なう。

薪を集め焚き火の準備から宴会へと進む。アルコールが無くなりやがて寝床へ。指圧付きベッドは傾斜がきつくビレイを確保しながら寝る事に。強めの指圧でなかなか寝付けない。おまけに風が岩をゴロゴロと落として来るので、ヘルメットを外せない。

【4日目】平成24年9月17日(月曜日)晴れ

身体が痛く寝付けない!まだ2時、…3時みんなは寝静まっている。4時になっても起きそうにない、疲れているのだろう。起こすのは4時半ごろにする、

それまで横になり、もういいだろうとトイレに立つ。焚き火の勢いが弱まり、薪を追加するが焚き火の周りに寝ている2人は動こうとしない。5時前ごろ、皆がもそもそ動き出す。

雪渓のクラックが大きくなっているようだ。昨日偵察したSによると、雪渓が続き幅の細い雪渓部分があるので杖となる木を各自調達するよう指示が出る。左岸側のガレた法面を登り雪渓との隙間1m程度をまたぎ雪渓に乗り移る。雪渓は硬く凍結しストックなどでは食い込まない。滑らないようにスプーンカットの頂部を注意しながら進む。傾斜は大したことはないようだが、滑り出すと止まるのか心配。進むうち左岸側の法面から落石が起き脆弱な法面である事が伺える。さらに数十メートル進むと、左右とも切れ落ちた狭隘な雪渓の橋が出現する。一番狭隘な部分は幅50cm程度で長さ3mぐらい。基部は1m程度で全長20m程度の雪渓の橋である。一人ずつ順次渡って行き私の番に。足元を注視しての歩行、周りを見渡す余裕がない。一番狭隘な部分を進んでいると「ガラガラガラ―」と大きな音響とともに女性の悲鳴が聞こえる。

足元の注視を続けなければ滑落しそうであり、気にはなるが前方を確認できない。やっと橋を渡りきり前方を確認すると、誰も怪我がなく安堵する。落石は、雪渓から左岸の法面を登攀中に発生したものだ。わざわざ危険な法面に迂回するのか?これは雪渓の前方が大きな口を開け直進する事が出来ないためである。脆弱なガレ場で足を乗せるとずるずるとズリ落ちてくる。まるで砂地獄のようだ。3m程度登りトラバースする、途中盛り上がり部分を跨ぐ事になるが。足の置き場所が無い、全て崩壊しそうだ。「その岩の上に乗って」「穴が空いているよ」「穴に岩が挟まっている」「みんな乗ったから!」そう言つても体重が違うし、繰り返し乗っているから同じ状態ではないよな!トラバース後再度雪渓に乗り移る。上流からは進めそうもなく、左岸法面に残った雪渓のウイングからSが様子を確認するがNG。右岸側に下りる事に。4m程度下降し右岸法面をカニの横歩きで10m程度トラバース。ここから3m程度下降し雪渓の中に入る、長い雪渓の下を足早に通過し雪渓を抜ける。(PS雪渓の下にはGPSの電波が利かないのか記録されていないことが下山後判明。)

この辺より枯れ沢になるが、登攀場所はまだまだ続く。左岸側の岩場を登攀する、下から見ていると足がかりは有りそうだが皆苦労している、「滑るのかな」特に最後の登りに四苦八苦、Sも残置されていたお助けロープで登ったようだ。左足を大岩の手前に乗せて登るが、登攀中ブースカブースカ文句を言っていた者たちが登りきると、「ヤッホー」の歓声が上がる。

私は股関節が硬く左足が上に上がらない、なんとか引っ張り上げてもらう。ここからの景色はすばらしく確かに歓声を上げたくなるだろう。ただ山頂方面を俯瞰すると三方が急斜面に閉ざされた岩場はまだまだ続き、正面には大日岳の岩峰が覆いかぶさるようにそびえている。

左岸側は、すでに水が枯れた三段のナメ滝が控えている。右岸側の法面をトラバース気味に登攀する事になる。先行者が登攀すると浮石なのか激しい落石が続き脆弱な岩場と伺える。S、A、R・Tと登攀しロープを確保すると、そのあとにO、Ky・T、U、K、Sa・Hと続く。

末端のロープ確保にS・H、小壇の上にKとSa・HおよびアシストとしてH・Tが、中間固定部分にKy・TとUが待機している状態で、Oが中間部分を通過し正面の岩場を登攀する時に枯れ滝方面に3m程度滑落する、体制を立て直し上がり出すがさらに滑落し枯れ釜に止まる。登ろうとするがさらにここから滑落する。Aが助けに向かい空身で登らせるが登れず、しばし枯れ釜で休ませる事に。

後続のKy・TはOと同じコースに進み苦労している。Uは直登コースに進み無事登攀する。私の番、直登コースに向かう。Oの体重を数回耐えたハーケンだが私が滑落しても抜けないだろうか?あれだけストレスを与えたからなと、心配しながらなんとか登攀する。

水のないゴルジュを登攀する。Hのアシスト中に落石が発生、運悪くHの左手に直撃を受け負傷する。

抜けるような青空に衝きあげた大日岳がそびえる、手前にはさらに狭隘となったゴルジュを登攀するが、最初は手足をフルに使いやがて背中を押しつけながらの登攀となる。

次には深い薮の中に突っ込む、手前に見え隠れしていた登山道は近づいて来ているはずなのに、果てし無く遠方に見えてくる。薮の中をトラバース中に足を滑らし宙吊りとなるが、Hi・Tのアシストで復帰する。

入道岳方面に進むがタイムオーバ、薮の中でビバークする事になる。水が無い。水を分配するが心もとない。行動食は有るが、水が少ないので食べる気がしない。

タ―プを張るが強風に暴れている。沢靴は昨日から履き続けているがサンダルでは心もとなく履き続ける事に。

雲行きが怪しい、雨が降ったら身動きが取れなくなる。晴れていてもあれだけ薮で滑ったからまともに登れない。これで雨でも降ったらやばいな!

身体とザックを薮に固定し休む段取りを行なう。ザックに頭を置き寝るが傾斜がきつく寝られない。ザックを下にし足を乗せて寝るがハーネスが身体に食い込んで激痛を覚える。

昨日は岩の上であり、滑り落ちる事はなかったが、この傾斜では固定しないと滑り落ちる。皆どうしているのか?

身体をずり上げて食い込みを緩和するが直ぐに元に戻る。解放したい衝動に駆られるが、気の赴くままにすると世の中に復帰出来そうにない。

ザックの中身を全て出し両足をザックに突っ込む、ザックにテンションを掛けるようスリングの長さを調節しハーネスの食い込みを抑制した。やっとの事で眠りに落ちる

【5日目】平成24年9月18日(火曜日)晴れ

目が覚めると晴れていた、4日も続けて晴れるとは運がいい!行動食は水が心もとないのでパスし、水を口に含ませ喉を潤すだけにする。

大日岳の南西側に向かう。傾斜が強く薮と樹木に足を取られ滑って上がれない。お助けロープをもらうが、数回滑り落ちて上に登れない。皆の助けを借りて登るが、すでに体力がなくなる。登山道まで50m程度のトラバース、滑る滑る。天気に助けられやっと登山道に付くが水が無い。あとはゆっくりと下山する。

「この沢は、距離が短いから3級なんだ。荷物を持たずに日帰りする沢」。3級がどの程度のものか私には解らないが、今回の事で沢登りのセンスが無いのが解った。振り返ると八海山が綺麗に俯瞰できる。紅葉だと綺麗だろうな。

水場に着くが「だめだ!枯れてる。」落胆が激しい。頭が縛られているように感じる。下山途中に伏流水らしき水を調達すると頭の痛みも軽減する。

なんとか登山口に到達、登山口にある沢水をむさぼり飲む。「うまい」!やっと沢靴から解放されるが、足はふやけにふやけ土ふまずに皺がより豆が出来ている。

車を走らせ自販機のジュースを煽る。温泉につかり「アー・ウー」と奇声が発せられる、みんな傷が沁みるようだ。昼食をとり帰途に就く。下山1週間後、左足の膝下に痛みが出て医者に行くと、膝下の傷からばい菌が入り化膿したとの事。ズボンの中で傷に気付かず放置したためである。(記 Ry.K)

入会して初めての山行である。本来の計画は只見川「恋ノ岐川」であるが、崩落があり入山できず。新潟の入道沢に転進する。

第一日目(9/15)

駐車場で準備して入渓する。途中でマムシ発見。4m巨岩竜ではザックを引き上げてもらい空身で登る。天候がよく水は心地よい。しかしザックの重みが肩にのしかかる。小滝でT(L)が登りTさんが続いたので、私も挑戦するが釜に落ちる。(L)より再挑戦の指示があるが、あきらめて巻く。幕営地が近くとの事で、小さな釜で全身浸かる。天気よく衣が直ぐ乾く。古雪沢に入り幕営する。ガレ場を整地、草を敷きその上に銀マット敷き、タープを張る。すべてにおいて初めての体験である。快適な寝床の完成である。並行して焚き火の準備で流木を一昼夜分拾い集めた。焚き火の脇で米を炊き込む、さすが本格的である。出来上がった炊飯は、コッヘルを人数分集めて均等に分けるので大変平等である。(肉どんぶり)炊き込むのでご飯もおいしい。各自ビールを持ち込んでいたので分わけてもらう美味い。焚き火の炎を見ていると穏やかになる。贅沢な一時である。酔いも廻り寝床に入る星空がきれいである。

第二日目(9/16)

起床5:30すでに焚き火はできている。朝食はラーメンである。6:30に出発する。雪渓50cm幅×4m程を渡る。心臓バクバク、更にガレ場が続き、雪渓トンネルくぐる。又これでもかと竜が多く、ザックを背負った身では大変である。要所では空身で登攀する。よってザックの引き上げ時間が掛かる。草つき岩場のトラバースで、もう少しのところで脚がすべり転落。ザイルが左腕に巻きつき擦れた。もがけば腕にザイルが締め付ける。緊張で痛さは感じられない。ハーケンが抜けなくて大事に至らず。A(SL)が救助に降りてきてくれた。腕に絡んだザイルを緩ませて外す。ザックを下ろしてもらい、息も絶え絶えで興奮しているため休ましてもらう。メンバーには大分心配をかけてしまう。ザックを引き上げてもらい、空身で登る。更に過酷な登攀が続く。巻くために草つき壁を登攀して、又藪漕ぎは続き、更に懸垂下降がある。懸垂の際、藪漕ぎで握力が弱くなり、右腕のザイル確保が効かなくなり流されてしまう。懸垂下降には自信があったのであるが、空身での訓練しかしていなくザックの重み・疲労感で、脚が壁に押し付けられず体が横になり散々な懸垂下降であった。しかし滝は続き、ザックを背負う遡行は更に過酷さが増え身体にかなりの影響有り、傾斜のある藪漕ぎ(Lからは平泳ぎの体制での声がかかる。なるほど)登りはタイブロックで確保しているが、腕に頼りすぎ握力が弱まり木々に上手く握り事ができず、更に脚力も弱まり踏ん張りが効かず、ぶら下がる状態である。タイブロックにテンションが掛かりすぎ、身動きできなくなる。Sさんが降りて来てザックを引き上げてもらう。更に補助ロープを下げてもらい。空身で一気に登りやっと登りきって抜け出した。また更に続く藪漕ぎが辛い・辛い。心身ともに恐るべき、すざましい洗礼を受けた3級上の沢である。このような状況で時間が掛かりすぎて、本日下山できず初めてのビバークである。携帯が通じるため家にメールするが、空腹と疲れで思考と共に指も動かず、メール内容は「時間切れで泊まります」とようやく打ち込んだ。後で意味が分からないと妻に散々怒られてしまう。ビバーク地は傾斜であり、草を束ねてスリングでザックと体を確保しての就寝である。疲れと寒さと風の音で寝付かれない。悶々と一夜を明かす。まだ雨が無いので良いほうかもしれない。大変な一日であった。

第三日目(9/17)

疲れと共に体の節々が痛い。又、更なる藪漕ぎ(平泳ぎ)しながらようやく尾根に到達する。ようやく藪漕ぎから開放された。一瞬疲れも忘れるほどの感激である。全員と握手して労をねぎらう。一休みしてから下山開始しかし長い道のりである。水の残りが少なく我慢しながら歩く。水場は枯れていて残念である。疲労感が激しく30分置きに休みもらう。12時にようやく駐車場に付く。先に下山してくれて車を持ってきてくれた。S・H・T3氏には大感謝である。早々に身支度して、自販機のコーラを飲む・・・・上手い。落ち着いてから、お風呂に入る心底幸せを感じ極楽である。食事の際、ビールで乾杯した格別の上手さがありました。感謝あるのみでLには車の運転手をしてもらい申し訳が無い。初めての3級の沢は、こんなにも過酷なものか、十二分理解できた。早々参加できるものではない。この貴重な体験を基にしっかりと技術を磨き、体力を付け危険回避などを見定めて安全な山行に邁進したい。今回、的確な対応で危険回避してもらい、擦り傷程度で済みました。達人Sさん、T(L)及び各メンバーに助けられて、“3級上の沢”を遡行・登攀できたことは感激です。又、沢の奥深さを知りました。参加させていただいたことに感謝いたします。(Se.O記)

入道沢 『上越・広堀川支流』

~ 間違いと冒険の狭間で~

文章を書くのは苦手なので、感想文は出したくなかったのだけれど、私を引き受けてくれた二人のリーダーと仲間に感謝を込めて、投稿することにした。

「恋ノ岐沢」に行くはずだった二パーティーが、銀山平から先の林道が崩壊補修工事のため入れず、急遽合流して「入道沢」に行くことになった。林道不通に関しては事前の調べでは分からなかった部分なので仕方ない。せっかくの三日間の休日でもあり、新潟まで来ていて天気も良いので、みんな「どこかには行きたい。」という気持ちが強かった。手持ちの資料を持ち寄って相談が始まった。結果は、移動可能で、リーダー二人がある程度状況が解っているという「入道沢」になった。私は、何処に行ってもお世話になることには変わりないのと、リーダーがこのメンバーでも何とかなると判断してくれたのだろうと、そのまま参加した。

一日目
途中で行き先を変更したこともあり、歩き始めた時刻が遅かったので、3~4時間で一泊目となった。入道沢と古雪沢分岐付近。これだけ歩くだけでも経験や技術・体力にかなり差があることが解ったが、沢としては普通。枯れ枝や流木を集め、焚き火を囲み山談義に花が咲いた。

二日目
だんだん谷が狭まり、急な登攀要素の増えた滝登りとなるとロープを出すことが多くなった。しかも今回は二パーティー合流して十人という大所帯。たぶん30㍍四段の滝だろうと思うが、越えるのに2時間近くかかってしまった。大仕事を終えた気分で見上げると、そこには大きな雪渓があった。「!」。夏も終盤のこの時期に、しかも今年は暑かったというのに、こんな大きな雪渓があるなんて。先駆隊が見てきたところ、この先は雪渓の上を歩く、その先はどうなっているか解らないという。時刻も四時近いということで二泊目となった。このあたりが核心部かと思った。

体力・技術のある人達が多いので、私はかなり楽させてもらっていたのだが、きついといえばきつい。とにかく腕の力がないから、少しでも腕を頼って登るところがあるとすぐ疲れて力が入らなくなってしまうのです。他の人達は皆余裕だ。焚き火は今日も勢いよく燃え、目の前の巨大な雪渓を削ってロックを楽しんでいた。空は満天の星。

三日目
核心部はこの辺だけ、ここを越えればあとはそれなりに登山道に入ると思いたかったのだが甘かった。朝早々傾斜のある雪渓の上を緊張しながら数10㍍歩いた先で、更に数㍍ではあるが巾50㌢位で両側が切り立ったやせ尾根のような雪渓の廊下を渡った。続いて、巨大な雪渓のトンネルを抜けなければならないのだが、この不連続の雪渓の崖をどこから降りればよいのかというところから始まったのだ。やっと5㍍程の雪渓の壁の降り口を見つけ、今度は雪渓の下に入っていく。滴が雨のように落ちているトンネルの中の沢歩き。雪渓の崩落も想定して、少し距離を空けながら静かに、急いで、長いトンネルを抜けた。抜けてから振り返って見た雪渓は大きな船の舳先のように突き出ていて先端は薄くなっている。上からではそんな様子が解らないから、知らずにギリギリまで歩けば危険な状態だ。なるほど先端からは降りられないというのはこんな状態が解っていたのか。でも、なんて綺麗なんだろう。雪渓はスプーンカット状に模様が付き、その縁取りは黒く汚れてはいるのだが、溶けたり崩れたりして出来た、尖った割れ目や大規模なトンネルなどに荒削りの力強さを感じた。以前、知床で吹雪かれた翌朝に見たガラス細工のような繊細な雪の結晶の造形に感動し、今、大胆な力強い造形に感動している。繊細さと力強さ、緻密さとおおらかさを持った自然の造形を見るのが好きだ。そして、この大自然に畏敬の念を感じる。

くぐり抜けてきた大きな雪渓越に深く切れ込んだ谷が見えた。その谷の両岸には瑞々しい緑の木々、そして、その向こうには抜けるような青空があった。巨大な雪渓の末端をこんな関わり方で見たのは初めてだし、切れ立った谷の深さを見たとき、体力も技術もない私が、こんな所にいるのは間違っていると思った。でも、間違ったからこそここにいいて、この景色を見ることが出来たんだなと、皆さんには迷惑を掛けているけれど、私はちょっと得した気分になっていた。

ここから先も急坂の壁だったり、ルンゼだったり、それでも今日は登山道に出られると思っていたのだが、沢を詰めた藪と岩峰の境目付近で時間切れ。暗い中を歩くのは危険だし、この先は狭いからと「この辺でビバーク。」と指示が出た。

少し戻ったところに少しだけ斜度が緩やかなところがあり、そこがこの日にタープ地となった。何といっても総勢十人。なかなかおあつらえ向きなところは無い。もう少しましなところも有ったのかも知れないが、たまたま私が止まった所は傾斜の有る千島笹の有る所でずり落ちそうだった。ビレー無しではきっと夜の間にその場からいなくなっていたのではないかと思った。心配は傾斜ともう一つ、昨晩もその前も夜に通り雨が有ったことである。天気は下り坂のはず、雨が降ったらどうなるのだろう。下にツェルトやマットなどを敷くと滑るから敷かない方が良いということだったから、雨が草を伝って流れてくるのではないか、タープを張ってくれたけれど、私は端だったので濡れるのではないかと心配だった。ザックと人間にビレーを取って、足にも力が分散するようにして寝たけれども、2時間おき位に目が覚めていた。時折タープが強い風に煽られ体に当たるのを、天気が変わるのではないかと心配した。目が覚めるたび見上げるとそこには満天の星空があった。こんなに沢山の星が有ったんだとしばし見入った。そして、もう少し体勢が楽なら良いのにと思いながら、この星空なら雨はまだ大丈夫そうとホッとしていた。幸いこの晩雨はなかった。

四日目
朝、水の手持ちがわずかだったから、湯を沸かすわけでもなく、特に何もすることはないのだが、いつものように4時を過ぎる頃あちこちでごそごそし出した。私もカロリーメイト風の非常食を食べてみたが、水分が無いと飲み込めないものだということを知った。貴重な水を一~二口含んで飲み込んだ。

明るくなり始めた頃出発。まもなく登山道は見えたのだが、その間は千島笹の藪、藪、藪。藪の最後の数㍍の登りをみんな難なく登ったのを私はやっとの思いで登った。次々と握手を交わしたが、私の手の向きは下向きの幽霊状態。自分の体力のなさが情けない。でも、これで、あとは歩きさえすれば里に下りられると思うと気が楽になった。健脚パーティが先に下山して車を向こうの駐車場から回してくれた。有難う。大変だったけれど良い経験だった。また一つ貴重な思い出が出来た。  (Ky.T記)

今回緊急ビバークになって、問題は水だった。二日目のタープ地には水は豊富にあった。その地を出発する際、雪渓が切れるところでうまくすれば水が取れるかも知れないが、ここから先は伏流水になってしまうかも知れないから水は持っていった方が良いという指示があった。みんな水は汲んだのだが、その先がそんなに長くなるとは予想していなかった。三日目に登山道に出られ、そうすれば遅くなっても下山できると思っていたから、出来れば身軽にしておきたかったので、それほど大量にはストックしていなかったのだ。

雪渓のトンネルを通り抜ける際に、この先は水がないかも知れないから少しでも飲んでおこうと流れ落ちている水をすくって飲んでみたけれど、緊張していたのもあって飲んだ気がしなかった。そして、その後、全く水の取れる場所が無く、その夜ビバークに入ったとき、水の量は一人平均500㍉㍑だった。

翌日登山道に出て登山地図に印の有った水場も涸れており、沢筋も湿っている程度で水は無かった。結果的に駐車場から30分位の所に水の出ているところがあった。清潔そうだったのと、少し流れも見え、冷たかったので伏流水の出口と判断して飲んだ。怪しんで飲まなかった人もいるが、未だに腹痛を起こすことも無く大丈夫そう。たぶん問題無かったのだと思う。先も見えていたし、この時点でまだ水は80㍉㍑位は残してあったが、それにしてもやっぱり水が少ないというのは心細いものだと水の大切さを感じた。  (Ky.T記)

 

 

標高:入渓460 登山道取付:1610 下山口:480
累積時間:33時間55分  直線距離:12.03Km 沿面距離:19.25m 平均速度:0.57Km/h

【1日目】大宮21:00-東松山IC-小出IC-ゆのたに道の駅    仮眠

【2日目】道の駅4:50/6:00-国道352-銀山平温泉-国道352・291・214-
広堀河原P 8:00/9:00・・・P790ビバーク12:35                     6時間35分

【3日目】P790 4:00/6:45・・・2段の滝8:00/10:10・・・P1180ビバーク16:25         9時間40分

【4日目】P1180 4:50/6:40・・・雪渓の廊下・・・P1575ビバーク18:00          11時間20分

【5日目】P1575 5:00/5:40・・・新開道登山道P1620 7:40/8:10・・・P480 12:00      6時間20分

温泉:「湯らりあ」温泉400円 透明 室内*1 水風呂*1 サウナ(別料金)

昼食:「釜めし米太郎」 三国街道(17号)塩沢石打IC手前