餓鬼岳さん、お手柔らかにね   北アルプス餓鬼岳

2019年8月10日~11日

思い起こせば2年位前の例会時、H竜さんが会山行で餓鬼岳を募集していた。「TNさん行きませんか」と名指しされた時、隣に座っていたK坂さんが「行ってあげて」と。しかし、その後会山行は自粛となり、餓鬼岳は流れた。

白沢登山口の駐車場に前泊。お天気サイトではA評価だったが空には雲。お日様を期待して出発。最初は緩やかな登り坂だ。沢沿いに進む。

高巻きしたり徒渉したりアップダウンが大きい。沢筋のトラバース道にもロープや鎖がある。足場も切ってある。ただ濡れているので滑りやすい。

滑りそうと思った途端滑った!ギャー!H竜さん、しょうがねーなーって顔で助けてくれた。ホッ!ありがとう。

『水場2/6』と書かれた徒渉点もある。魚留めの滝の先が最終水場。休憩して水を汲む。

魚留の滝

が、ここが天国と地獄の境目だった。ここからは急登。どこまでもどこまでも急登が続く。何度見上げても急坂しか見えない。九十九折?あ、トラバースっぽい、少し休めるかなと思いきやそれも急。地図を思い出すが、確か大凪山までの等高線はずっと密だったような。汗が滴り落ちるなんてものではない。この衣類を脱水機にかけたら、いっぱい水が出てきそう。

お喋りなんて皆無。声も出ない。これがあと何時間続くの?今日、山頂無理かなぁ。弱気になってくる。前を行くH竜さんが見えない。休みたいとも言えない。時々立ち止まって待っててくれるが、声を出す元気もない。ノロノロと行く。「大丈夫?」声出ない。首を振る。やっと休憩。少し元気が出て登山再開。「先に歩け」でもダメ。気持ちが悪くなる。眠くなる。クラクラしてくる。熱中症?シャリバテ?そう言えば今朝はいつもより食べなかった、と勝手に決め付ける。次の休憩にはパンを食べようと誓う。樹々の中を登るだけで景色は皆無、花も無い。気が紛れない。考える事は自分の状態と食べ物の事だけ。やっと休憩。よし食べるぞ。でもゴックンどころかモグモグができない。水を含んでやっとモグモグゴックン。

休憩時、男性が追いこす。その人からテン場は狭く、3〜4張りくらいしか張れないらしいと聞く。H竜さん焦る。でもダメ。スピードなんて出ない。地獄の行進は続く。「お願いです。少し休憩させて下さい」「ん?」「少しだけ…休…憩…」「今しただろ」そんな会話の繰り返し。「荷物少し持つよ」閻魔大王がお釈迦様に見えてくる。でも、絶対、私のこと心配してるんじゃない、テン場を気にしてるんだぞ!(お釈迦様にこんな事言ったらバチが当たるかなぁ)

やっと傾斜が緩み、GPSでは大凪山頂。山名表示はない。まだ全行程の1/3が残っている。アップダウンはあるが最後の急登『百曲り』手前までは緩やかそうだ。下りて来た男性から、昨夜のテン場は自分一人だった小屋も空いていたらしいと聞く。やっぱりテン場しか頭に無いじゃない。別のお喋りな男性。コースタイムよりいかに速く行けるかに挑戦しているとの事。ふーん。『何処かで会った人が、この坂はブナ立尾根よりキツイって言ってましたよ』と言う。やっぱり!お隣の合戦尾根どころじゃないもん。

最後の急登“百曲り”を行く。樹々が少なくなり、展望がありそう。でもガス。ただ、足元には高山植物が見えてきた。クワガタソウ・ウサギギク・ニガナetc.百曲りは地図通り急登のガレ場だった。が、今までの急登を考えるとまだマシ。樹が少なく明るくなってきたし、花も多くなったので気も紛れる。チングルマやショウジョウバカマ・シナノキンバイも咲いている。あのH竜さんが「この赤い花なんていうの?」えっ?花の存在に気づいたの?別の場所でも「ほら」。指先を見るとしぼみかけたコオニユリが1本。私みたい(涙)。

咲き終わったコオニユリ2種

やっと声が出、会話が出来るようになった。花々が居てくれるからいいが、何度見上げても尾根が近づかない。どこまで意地悪なんだ!
“百曲り”が(たぶん)終わり「小屋まで15分」の看板があった。「ここで最後の休憩させてください」と懇願し休憩。ここまで来ると花が多くなる。ベニバナイチヤクソウ・ヨツバシオガマ・シラタマノキ。少しだけ緩やかになった道を登ってやっと小屋到着!ツッカレター!
先にテン場テン場。なんだまだ2張りしかないじゃない。詰めれば10張り張れるよ。うぇーん。無言の圧力を感じてたのに。
夕方、小槍を従えた槍が雲の間にチラ見え。広がった雲海の上側がピンクに染まる。

「山頂にテン泊するの久しぶり」とH竜さんがとっても嬉しそう。結局テントは10張りくらいになった。

5:03日の出。4:45位にテントを出た。雲海が赤い。槍や燕が遠望できる。東の雲海の先にポツンとしていた赤が少しずつ少しずつ上昇し大きな円になっていく。

雲海にご来光

輝きが増すにつれ、徐々に徐々に西側の山並みもモルゲンロートに染まっていく。声が出ない。登りにあれだけ苦労した甲斐があった。涙が出そう。

槍がクッキリ

朝食もそこそこに、今度は山頂を目指す。山頂に飛び出すと、目の前に鹿島槍がドン。そして針ノ木の隣にはドッシリと構えた重厚な劔!薬師・黒部五郎・赤牛。南には槍・穂高・常念。その先には雲海が広がる。その雲海に浮かぶ中央アルプスに八ヶ岳。北方にはやはり雲海に高妻・妙高が幻想的。

地図を広げ、H竜さんが山座同定をしてくれた。いつまでもいつまでも見ていたい。この風景、ここまで登って来た人だけの特権さ!

後ろ髪をたくさんたくさん引かれながら下山開始。しかし、下山もバテバテで、途中苦しさに、山頂からの景色は忘れた!H竜さんのお臍は曲りっぱなし。泣いちゃうよ!
下山後やっと山頂からの景色を思い出せた。ホッ!

餓鬼岳へのアプローチは何処からも大変だから人が少ないのかな。おかげで夏山ピークの時期に静かな山行が出来た。

真ん中に劔遠望

メンバー
リーダーH竜、TN