沢泊まりを楽しむ
2025年8月29、30日
■ルート
熊・クマ・くま、どこもクマ。テレビを点ければクマのニュース。日本中クマだらけ。本来なら黒部・赤木沢に行こうという計画が、クマがテントを襲ったとの事でキャンプ場が閉鎖されてしまい、太郎平の小屋もいっぱいで予約が取れず、やむなく転進することとなり、希望のあった大菩薩嶺から流れ出る小室川谷へ転進となった。
当日は道の駅たばやまで集合して、林道のゲートまで車で進む。ここは釣り客も多いようで既に駐車スペースには何台か先客がいた。
車のそばで装備を整えてアプローチを開始。20分ほどアスファルトで舗装された道を行くと「小室向」と書かれている木の看板があり、その分岐を下ると入渓点なのだが、一部は崩落していて道が悪い。慎重に足を運び、川べりに立つともうそこはファンタジーのようだ。落ちて朽ちたタンクが自然と人工物との退廃的なコントラストを奏でる。
遡行を始めてしばらくは緩やかな道でのんびり歩きだが、1つ目の滝が出てきた頃からしっかりとした登攀が出てくる。登れる滝もあれば高巻くところもあり、高巻くにしても高度感や足元の悪さもあり緊張する。ピッチグレードがⅣ-であるので、やはり私的には難しいところも出てくるが、同行メンバーが強い方々なので、怖いという気持ちは生まれなかった。
水はそこそこ冷たいが、1日目は暑かったのでちょうどいい。来る途中の奥多摩湖
は干上がっていたが、意外と水は多く楽しめた。調子に乗って無駄に釜で泳いだりしてみたが、後でアプローチシューズのビニール袋を開けたら靴がビショビショになっていた(笑)
ゴルジュのS字峡を抜け、中ノ沢出合のあたりがビバーク適地とされており、焚火の形跡も多々ある。我々もここで一晩を過ごすこととして幕営の準備を始めた。
テントやツェルトはともかく、川べりでタープ泊なんていうのは初めてで虫だとかクマだとか色々心配していたが、いざマットを広げシュラフに入ればなかなか寝心地も悪くない。住めば都とはまさにこの事。その夜はみんなで焚火を囲んで夜が更けるまで宴を楽しんだ。
翌朝、起きると蚊取り線香が湿気で消えてしまっていることに気付いたが虫刺されはない。無事だったようだ。朝食を済ませて出発の準備をする。これからのルートを話し合って、見どころの40mナメ滝を過ぎると、その先は延々と長いので、ピークに抜けるよりもCo.1240付近の水源巡視路でエスケープし入渓点まで戻ろうという事になった。起き抜けに沢の水は沁みる様に冷たいが、圧巻の40mのナメ滝を越え、巡視路へ入るところで装備解除。
「道って言ってもプロの言う道だからね(笑)」と言われた通りでアップダウンが多く、更にところどころ崩落して悪路となっていた。
ルートファインディングというよりも崩落しているからどこをどう進むかが難しく、途中何度も悪場を乗り越え、また道に戻りを繰り返すものの、ついに大きな崩落ポイントに辿り着く。
このまま崩落個所を乗り越えても更にその先がそれ以上に大きく崩落しているから進めるかどうか分からないとなり、大きな滝は過ぎたことから、沢に下りて沢を下ることとした。
何度か懸垂で下りるものの、最後の懸垂は高さがありロープ1本では足りないだろうという事で2本繋いで下りる。壁は切れ落ちていて、そこまで高い懸垂は初めてなので緊張したが、他の方から指導いただいて無事に終わる。
こういういい方は違うのかもしれないが、やはり現場で学ぶことは机上やインドアの何倍も身に入ってくる。面倒を見ていただいている諸先輩方には感謝しかない。
悪場を乗り越え、緩やかな沢下りで入渓点まで戻る。緊張する高巻きなどを越えて、ケガをすること無く無事に還ってこれた事に安堵した。
危険を冒しているつもりはないが、振り返れば危ないところもあっただろう。何事もなく無事に戻れた、楽しめたというのは良いメンバーに恵まれたおかげだと思う。
帰りは道の駅たばやまで温泉に浸かり、沢の臭いと汗にサヨナラして疲れを癒す。
帰り際にみんなで夕食に立ち寄った青梅の担々麺のお店がとても美味しくて、小室川谷を思い出すときはきっとこの担々麵も一緒に思い出す事だろう。
(おわり)
■メンバー:L:Y城、SL:T山、Y田、I田、S水(記)