長笹川・金山沢 3行しか記述のない沢

2022年10月2日

『支流の金山沢には十五mほどの滝が二本あり、樹林がことのほか美しい。途中流れが沢筋を離れ、岩をくり抜いてほとばしる珍しい侵食地形を見ることができる。』金山沢について書かれた文献は日本登山大系しか見つからず、しかも記述はわずかこの3行のみだ。I橋さんセレクトの沢はいつもマニアックだ。

尻焼温泉を過ぎた辺りに長笹川左岸沿いを走る林道があり、行ってみると林道入口からゲートで閉ざされていたのでそこより歩き始める。林道から外れて取水口から入渓を試みるが、大きな堰堤があったので、一度斜面に上がり巻きながら沢に降り立つことができた。しばらくは穏やかな気持ちのいい河原を歩く。途中から乳白色の石が混じるようになってくると、左岸に真っ白な土砂の山が見えた。近づいてみると、表面は高さ1センチ程の霜柱状のものでびっしりと覆われている。何かの鉱物の結晶だろう。自然の造形物のおもしろさにしばし見入る。

ここを過ぎると赤褐色の沢に変わる。少し進むと高さ10メートルはあろう巨岩の下部を沢が流れている。紹介にあった侵食地形だ。「ほとばしる」ほどの流れではなかったが、穴の大きさから以前はかなりの勢いがあったのだろうと推測する。

白淵沢と金山沢を1:1で出合うとすぐに大きな末広がりの滝がある。8mといったところか。左から登った。次の白糸状の大滝は10mほどか。右から登った。金山沢で大きな滝はこの二つだけであり、いずれも下部が谷からの石や倒木で埋まっているようであったので、登山大系に書かれた当時は今よりずっと立派な大滝だったのかもしれない。

あとはナメと苔を楽しみながら遡行していく。まだまだ稜線までは標高差を残しているのに、早くも水が枯れ始め、笹に覆われた藪沢の様相と化していく。最後は背丈を超えるチシマザサを30分ほど漕いで稜線へ出る。単調な藪漕ぎの途中にあらわれるダケカンバの一帯に爽やかさを感じる。エビ山と十二山の分岐のすぐ脇に出た。下山用にデポしておいた野反峠駐車場まではわずか30分ほどだ。

金山沢は自然の織りなす不思議な光景にたくさん出会えるいい沢だ。はじめはそっけなく思えた紹介文も遡行後に読み直すと、これ以上この沢について的確に言い表したものはなく、まるで一編の詩のような美しい響すら感じてくる。こうなると出合いで分かれた白淵沢にも俄然興味が湧いてくる。来シーズンに行きたい沢がまたひとつ増えた。

■メンバー I橋(L)、C葉

■ルート 林道ゲート6:10→稜線11:30(休憩)11:45→野反峠駐車場12:15

記:C葉