2018年3月18日
以前登山時報に小豆島のクライミング記事が載った時から憧れていた小豆島クライミングが実現した。記事には吉田の岩場や拇岳(おやゆびだけ)マルチピッチルートが載っていた。
今回は小豆島のインスボンと呼ばれる、比較的登りやすいマルチピッチルートを総勢八人パーティーで登った。リードとフォロー、一組二人ずつの四パーティー構成である。
岩場は東向き、ロープスケールは二ピッチ約八十メートル。一ピッチ目ポップアップ四十メートル5.7、二ピッチ目フックハング三十五メートル5.4。下降は南側を徒歩で下りるか、登ったルートを懸垂下降支点から下りる予定である。リーダーのK池さんとS田とさんが登る組み合わせと登る順番を考えて決めて下さる。
吉田から福田港に向かう途中、右手に三角の岩山が見えてくる。木々が育たない裸のスラブの岩山が目的のインスボンである。少し広くなっている道路に駐車し、民家の脇を登って行く。かすかに踏み後のある急斜面を、茨や藪を分けながら行くこと二十分。スラブの岩でできた滑り台のような岩の右手が登り口である。
早速、一番手のT田さんとYさんが準備を始める。今日初めてパーティーを組むYさんにT田さんは丁寧にアドヴァイスしている。そのアドヴァイスは三番手に登る私にも有効なので、聞き耳を立てて聴く。今日私は初めてオールリードで登るつもりである。朝から緊張が始まり、待っている間にもますます緊張感が高くなる。登り初めからT田さんの唸り声が聞こえ、その声にますます緊張感が強くなる。二番手はS田とさんとNさん。下で準備をしながら、S田とさんのムーブをよく見ておく。フォローのNさんのお尻を押し上げて、登る準備。滑り止めを手に付けて深呼吸。さぁー次は私の番。ハングを乗越し、左足で壁を押し付け、I村さんにお尻を押してもらい登り始めて右足を置く。スラブ状の壁は足を置く凹凸が少ない。一ピン目は右にあるが、行きたいルートは左側。少しずつ足を右に寄せ、ロープをかけ大きく息を吐く。これで落ちる心配はなくなった。二ピン目、三ピン目を続けてかけ、再び大きく息を吐く。傾斜はきつくないが、目の前からスラブの壁が頭上にえんえんと続いている。 その後はどのように登ったかほとんど覚えていない。
やっと一ピッチ目のビレーポイントにYさんやS田とさんの姿が見えてきた。T田さんが二ピッチ目のルート探しに時間がかかっているようだ。人工のビレーポイントは一番手のパーティーが使っているので、S田とパーティーと同じように立ち木に確保支点を作る。ロープを持ち上げ、振り分け、フォローのI村さんのビレーを始める。しかし、ルートが斜めになっているためか、ロープが重く、ボディービレーが効かない。振り分けたロープは滑り落ちる。必死でビレーする。岩の下からI村さんのオレンジのヘルメットが見え始めホッとする。二ピッチ目は少しずつ登りながらトラバースするルートなので、比較的登りやすいが、ピンが遠いためにやはり緊張する。大きめのテラスがあり、そこに人工の確保支点がある。一ピッチ目のロープの振り分けがうまくいかず、ロープがちゃんと出るか心配したがどうにかスムーズに出たようだ。
三ピッチ目はハング脇の岩を登り、五十センチの割れ目をまたいで頂上へ。ホッとして腰を下ろしたとたんバランスを崩しそうになり、あわや割れ目に落ちるかと思ったが、どうにか持ちこたえ、S田とさんと顔を見合わせた。ロープを引きずり歩き、比較的平らな終了点でビレーする。登ってきたI村さんの落ち着いた顔を見てやっと安心した。
I村さんを確保
最後のピッチでI村さんを確保
I村さんも私のリードにきっと緊張していたに違いない。後からすぐ最後のY城、K池パーティーが登ってきて、全員登頂。
しばらくは頂上からの内海の景色を眺め、近くを飛ぶトンビの飛翔に癒されて緊張を解きほぐす。頂を吹く春風も暖かい。
懸垂下降はI村さんが構築し先に下りる。懸垂下降してしまえば、今日のマルチのクライミングは終了してしまうのでいつもよりはゆっくりと下りる。
懸垂下降2ピッチ目
四組とも無事に終了することができた。晴天と穏やかな大気にも恵まれた。私は反省点がいくつもあり、今後の課題がいっぱいである。頭が真っ白になった時もあったが、落ち着いて取り組めた。I村さんと協力して終了することができ、信頼感と感謝の気持ちでいっぱいである。また、簡単なマルチに挑戦したい。必要な練習課題も判り、楽しくも有意義な山行になった。