山行実施日;2012.05.03-05
参加メンバー;Hi.T、Sa.H、Ry.K、Ky.T、To.U
本格的な山行は何ヶ月ぶりになるのだろうか。お正月早々風邪を引き、長引き、すっかり意気消沈の日々。四月のお花見ハイクに久々の参加。桜の花と新緑と皆さんの笑顔にいっぱい力をもらい元気が出てきました。その時の車中の会話で「連休の山行はどこへ行くの?」ああ、そうだ、ボーッとしているうちにもう大型連休だ。気持ちはあせるけど、身体の準備はさっぱりだ。とてもとても気後れがして、詳しい計画すら積極的に聞くこともできず帰ってきてしまった。でも、やっぱり参加したい。一度も雪山にいかずに、シーズンを終わってしまうのは寂しい。大いに迷いながらも思い切って後半の計画、大日岳に参加を決めた。
五月二日夜、小雨の中、家を出発。大宮でメンバーと合流。上市町馬場島Pへと車を走らせる。連休後半の天気予報はあまりパッとしない。途中、雨が降ったり止んだり、闇夜の空が、薄明るくなり、雲の切れ間が見えたりすると、つい明日の天気を期待してしまう。馬場島の駐車場にはすでに数台の車と二~三張りのテントがあった。私たちもHさん持参の新品のテントを設営、三枚の毛布を引っ張り合いながら朝までウトウト。
五月三日、朝の天気は小雨、ガッカリだ。食事をしながら様子をみる。ようやく雨も上がり出発を決める。うれしい。せっかくここまで来たのだから、せめて雪の有る所まで行ってみたいと思っていたのだ。ガスっていた稜線が少ずつ晴れて久々に見る雪山がまぶしいほど綺麗だ。もう、気分はワクワク。共同装備の分担も終わり、準備ができた。やっぱり雪山三日分の荷物は重い。誰のが一番重いとか、不要な物が入っているとかいないとか、アルコールが重いとか、そんな会話もやけに楽しい。中山より先の東小糸谷より登り始める。巾1m位の流れを渡渉。雪の下が大きな空洞になった箇所の通過。ゆるんだ雪の塊の落下。雪と夏道の境目。濡れた笹のツルツル。夏道とはいえ、全くの藪こぎ。気の抜けない登りが続いた。それでも私の気分は壮快だ。久々の雪の感触がとても嬉しい。急斜面でピッケルを差し込み、力一杯一歩一歩けり込む。リズム良く進むと何と気分の良いことか。雪山サイコー!良い気分だ。でも私の気分とは裏腹に、お天気はどんどん悪いほうへ向かっている。1.500m付近からガスの中、小雨になってしまった。急ぎテント場を探し、テント設営。強風に備えてブロックを積み、雪面を踏み固めてと、結構な作業量だ。それでも本格的な雨になる前にテントに入ることができた。良いタイミングだった。まだまだ陽は高いが、ガスの火を囲みまずはビールでカンパイ。長い夜の始まりです。のんびり、ゆったり、ボーッと過ごすテントの時間はなんて心地良いことでしょう。米飯も上手に炊けて、歩きながら摘んだフキノトウの一品も加えておいしい夕食も終わりました。あとは話のネタ探し、話題はあっちに飛びこっちに飛び、行ったり戻ったり、繰り返して大笑い。なんと楽しい時間でしょう。
五月四日、午前3時起床。外は小雨。朝食のたぬきそばを食べながら様子を見る。昨日の行動時間が短かったこと、今日も早い時間から行動することが出来ないことから奧大日岳ピストンに変更する。そのためには今日は少しでも進みたいがなかなか雨がやまない。8時30分頃ようやく雨も上がって出発する。クズバ山までは夏道がついているが、すっかり藪になり歩きにくい。雪も雨で溶けたかザクザクで割れやすく油断できない。そのうち三、四時間も経たぬうちに雨が降ってきてしまった。なかなか良いテン場も見つからず、ザックやズボンがすっかり濡れてしまった。でも気温が高いのか少しも冷たくない。なんとかテン場に着いた時には雨が本降りになり、テントに入ると同時に雨は一段と勢いを増して降ってきた。運が良いのか悪いのか。濡れたズボンを乾かしながら行動食のお昼を済ませると、いよいよアルコールの出番です。昨夜よりも一層長い長い夜の始まりです。時間がたっぷりあるのに、夕食の準備はジフィーズのお湯を沸かすだけ、とあまりにも簡単すぎます。やることもなく、話のタネも尽きそうな程時間がゆっくり過ぎていきます。それでもなんだか妙に楽しくて笑いが絶えないのです。益々勢いを増す雨にトイレに行くのさえタイミングが大変です。まだまだ、今だ行け!!靴下も濡らさないように、皆裸足で雪の中に駆けだして行くのです。なんと最初の二、三歩はとても気持ちが良くて、そして、思いの外ツルツル滑るのです。こんな事をこの年(?)になって喜々として楽しむなんて想像もしませんでした。雨に濡れてズブヌレになってもちっともヘコまず、すっかり停滞を楽しんでしまいました。
五月五日、午前3時、外は雨が降ったり止んだり、稜線はすっかりガスの中。昨夜の雨の勢いを思うと、テントの周りの雪がどうなっているのかとても気になる。天気の回復はとてもゆっくりで、八時頃にようやくガスが切れてきた。これからの行動をどうするかメンバーで相談。あまりに大量の雨水を含んだ雪の状態や、明日の天気の具合などを考え、残念だが撤退することになった。時々薄日の射す天気のなか下山開始。ザクザクに溶けた雪はピッケルが良く効かない。急斜面で一度ザイルを出してもらい、慎重に下降する。雨のため、雪はずいぶん溶けてしまったようで、ほとんど夏道の下山となるが、藪が多くて歩きにくい。イワウチワ、ショウジョウバカマ、アズマイチゲなどの花が満開に咲き誇っている。
お天気に阻まれ計画通りには行かなかったが、久々の雪の感触、テントの生活、ベストの体調、私は充分楽しみ、満足の山行だった。下山して馬場島Pに着いた時の第一報が、白馬、五竜の遭難事故。やっぱり無理をしないで良かった。見上げた空はすっかり晴れていたけれど、納得のいく撤退でした。行く機会があれば再度挑戦してみたいものです。(To.U記)
晴天の大日岳稜線と富山湾の遠望
ゴールデンウイーク後半の山行計画は、剱青少年研修センター/中山/クズバ山/奥大日岳/大日岳/県青少年研修センター縦走を、前日泊+2泊3日+予備日1日の予定である。
馬場島への林道「富山県道333剱岳公園線」は、4月29日の開通予定であるが今年は雪が多く予定どうり開通するか危ぶまれた。開通が遅れれば剱青少年研修センターからの林道歩きとなるが、林道は開通し馬場島まで車で移動する事ができた。
【1日目】5月3日 雨・曇り
テントを叩く音で目が覚める。馬場島の駐車場に早朝到着し仮眠を取っていた。外では他のチームの話声が聞こえるが、出かける様子がなさそうだ。初日から停滞か?暫く様子見のため再度シュラフに潜る。やっと雨が小降りとなり準備にかかる。警察に登山計画を提出して出発する。
コースは「東小糸谷」から「クズバ山」経由に変更となる。林道の雪は溶け「フキノトウ」があちこちに芽を出している、やがて「立山川」の橋を左岸側に渡り「東小糸谷」に向かう。
雪解けのため水量のふえた「東小糸谷」の右岸側で、雪の残っている法面をトラバースしながら登る。やがて左岸側に渡渉し中山の鞍部へ向かい小休止しクズバ山へ向う。天気は回復し青空のもと「早月尾根」や「猫又山」を望むが、まだ剱岳を見ることは出来ない。此処からの急登は夏道となり汗が絞り出される。滴り落ちた汗の先には「イワウチワ」「キクザキイチゲ」「ショウジョウバカマ」などが咲きだし目を楽しませてくれる。
急登は衰えることがなく、やがて巨大な杉が現れる。幹の直径が3m程有りそうな古樹だ。中山の北西尾根に「五本杉平」と呼ばれる場所があり、ここには樹齢1000?2000年の「立山杉」が有るそうだがこれもその一つか?登攀中西斜面から雪崩ている音が時たま聞こえてくる。
やがて霧が発生し視界を遮り出す。疲れた!しかし急斜面は延々と続き休める場所を確保できない。霧はますます深くなり視界約20m程度となる。
「この斜面を切ってテン場にするか」「この斜面に?雪崩は?」「此処は大丈夫だ」「あの上は平らだよ」「じゃあそこまで逝くか」……「どこが平らだ!幻覚でも見だしたか」「もう少し行けば緩斜面になりそうだ!」P1625をテン場とする。雪庇を離れ法面側に位置を設定する。
テント周囲は強風に対処するため、雪面をブロック状に切出してテント周りに積み重ねる。当初のテント予定地まで行けなかったがこの天候なら致し方ないだろう。
【2日目】5月4日 雨・曇
雨も止み天気となりそうだ、予報があたったか。
準備を始めようとすると激しい雨が降り始める、しかたなくテントに停滞する。しばらくすると天候が回復し準備を始めるとまたまた激しい雨、「雨神様にさとられないように準備しないと」。停滞と準備を数回繰り返し遅い出発となる。
昨日積んだ雪ブロックは、雨に叩かれたことと温度が高いのかかなり崩れている。
昨晩は多くの来訪者がテントの周りに飛び跳ねていたようだ、挨拶変わりに土産物があちこちに置いてある。
雪稜を進む、直ぐに大きな雪庇が現われる。出来るだけ樹木側を拾って歩く、地山から雪庇を振り返ると大きく張り出しているのが分かる。
すぐに激しい雨が降り出し雨具を着用するが、身体をたたく激しい雨に閉口する。ときたま残る雪は薄く斜面にやっとへばり着いているようだ。出来るだけ衝撃を与えないよう間隔を開けて注意深く登攀を繰返す。
脆弱な雪面を避け藪の中を進む、尾根は狭く狩り払われた笹が短く残る、この笹竹を踏むと大きくバランスが崩される。また笹の茎に乗ると雨と傾斜に足元が滑り苦労する。
尾根が途切れ斜面を少し迂回しながら通過するが、ザックを背負ったままでは狭隘な樹木の間を抜ける事が出来ない。ザックを一度斜面に預けて樹木の間を通過するが、ザックを背負い直すのに非常に不安定な場所で背負っているのを見るとかなり苦しそうである。体の固い私にはバランスが保持できそうに無い、さらに下を迂回するルートとするが足場が確保できない、樹木を頼りとするが、腐ってぼろぼろと崩れてくるので、身体を斜面にこすりつけながらの通過となる。
いやらしそうな雪壁7m程度を這い蹲りながら直登する、ザザー!50cm程度の雪ブロックが滑落し登攀者に襲いかかる、幸い横にそれ大事に至らなかった。
この後はさらに急斜面の雪壁を50mほど直登する。
クズバ山に到着しすぐ前には自転車競技のバンクのような雪壁が続いている。雨も止みそうになく、また気温も高いままだ。先を進みテン場を探すか?今日はここでテントを設営するか検討を始める。先にテントを設営出来るか確証も無く、雨も止みそうもないためこのクズバ山山頂をテン場とする。ここは1日目のテン場予定地だが!2日掛かってしまった。
宴会を始め20:00ごろだったか、雨がテントを激しく叩き始めた。降り始めた雨は収まる事が無く眠りにつく。
【3日目】5月5日 晴れ
昨夜に引き続き、激しい雨の歓迎を受ける、雨が止むまでかなりの時間を擁した。テントを残置し大日岳にアタックするか、あきらめて下山するか暫しの検討を要する。
今日と予備日合わせて2日間の時間はあるが、目前の雪壁が昨日の雨に叩かれ水分を十分に蓄えている事と冷え込まなかったため脆弱となっている可能性が高く、通過は危険と判断し下山することに決定。
下山を決めると天候が回復し晴天に変わる、雪化粧した奥大日岳~大日岳のルートが綺麗に望め、北側には富山湾も綺麗に見える。残念では有るが記念写真を撮り下山する。
すぐに50mの急斜面、ここはロープで確保し下降する。尾根が途切れた部分も通過し緩斜面でフルーツタイム。東側には剣岳が良く見える、なぜか「早月尾根」を見て皆な感慨に耽っている。そういえば私以外は、昨年の5月に剣岳に登攀したメンバーだ。
初日に設営したテン場は跡形もなく溶かされ夏道を下山する。下山途中で2人の登山者に合う、地元の人で毎年のように、日帰りでクズバ山に登るそうだ。大日岳の縦走はあまり聞かないようだ。鞍部近くまで行くと中山の登山者が多く見えだす。
雪解けが激しく「東小糸谷」の左岸から右岸に渡渉する。右岸法面の雪が消え進むことが出来ない。左岸に渡る橋(樹木が2本)が有り渡渉する。左岸の川の渕にある雪壁が肩近くまで迫り、ザックと喧嘩する。もう馬場島まで近いので濡れる覚悟で沢を進む。馬場島に着くと白馬での不幸を知らされる。(Ry.K記)
標高:クズバ山1875 馬場島750
累積時間:13時間20分 累積距離:8Km 平均速度:0.6Km/h
【前日】平成24年5月2日(水曜日)
大宮21:00-東松山IC-関越道・上信越道・北陸道-滑川IC-馬場島2:30テント仮眠
【1日目】平成24年5月3日(木曜日・祭日)雨・曇り 気温 10度
馬場島8:00・・・東小糸谷・・・中山鞍部10:30/10:50・・・テン場P1625、13:50 就寝20:00
<馬場島からの登り時間5時間50分 距離:3Km 速度:0.51Km/h
【2日目】平成24年5月4日(金曜日・祭日)雨・曇り 気温13度
P1625、3:00/9:20・・・クズバ山P1875、11:30テン場 就寝21:00
<P1625からの登り時間2時間10分 距離:1Km 速度:0.46Km/h
【3日目】平成24年5月5日(土曜日・祭日)晴れ
クズバ山3:00/8:30・・・P1625、10:25・・・鞍部12:00・・・馬場島13:50-温泉-昼食-大宮
<クズバ山からの下り時間5時間20分 距離:4Km 速度:0.75Km/h
温泉:みのわ温泉510円 透明