頼母木川・足の松沢 難しい沢に行くのだと緊張

2020年8月20日~22日

行きの車中で「管轄は新発田警察署だから」と事故発生時に使用する緊急連絡メモをS木さんより手渡された。難しい沢に行くのだと少し緊張する。奥胎内ヒュッテに車を停めて、登山口まで林道を一時間歩く。天気は快晴。とにかく暑い。歩きながらイワナの餌用に道端のバッタを捕まえる。登山道に入るとすぐに勾配の上がる地点があり、そこから沢に降りる分岐があった。降りたところの小さな河原で沢装備に着替えた。

入渓点

心配していたアブはいない。快適に小滝を超えてゆく。釜のある小滝で初めてロープを出した。A部みさんがロープを引いて左側より直登した。続く2段8mの滝は左岸を巻いた。滝を越えたところの河原を幕営地とした。全員合わせてイワナは5匹釣れ、うち一匹は釣ったその場で捌いてみた。この前教わった口での皮剥ぎを実践してみたらうまくできた。教わったことができるとうれしい。剥いだイワナは刺し身で食べた。あっさりしているがしっかりとした旨味があり滋味深い。残りは一人一匹ずつホイル焼きにした。人のいない深い峡谷の闇の中で、水の流れる音を聞きながら、焚き火を囲み、イワナを食べ、酒を飲み、星を見る。いい時間だと思った。

エビスビールで乾杯

2日目、最初の2条2mは左岸をへつった。ここは問題なかったが次の2(1?)m滝に苦労した。小さいながらも垂壁に挟まれた滝は泳いで近づくことも難しいため、右側を行けるところまでへつって攀じ登ることにした。しかし私がトップでいくが登れない。何度も落ちて全身ずぶ濡れになりながらトライを重ねるが、どんどん寒さで力が入らなくなりますます登れなくなる悪循環だった。結局、S木さんが空身で登り上でロープを設置し、みんなアッセンダーをつけて登ったが、寒さで全く力が入らなくなった私は、お助けヒモもしっかり握れず、ぐいぐいとロープで引っ張り上げてもらう始末だった。登ったところでバーナーでお湯をつくり飲んだ。太陽も出始め、じきに震えは収まった。

登れなかった小滝

しばらく歩くとゴルジュ帯に入ったが川幅は広く歩きやすかった。快適に小滝を超えてゆき順調に進んだ。2段20mの滝は右岸を大きく高巻いたが、斜面が急な上、草付きの泥壁が大変悪かった。さらに下降ポイントを見つけるのに手間取りこの滝を越えるのに2時間40分もかかってしまった(懸垂で降りた場所は悪くなかったのでルートは間違ってはなかったと思う)。

50m+30mロープで一回で降りられた。

続く2段30mは右岸より高巻いて懸垂下降。直後も登れない滝が現れたので高巻くことにし、滝の下から見えていた下降ポイントから順々に懸垂で降りていったが、降りた目の前に登れない滝が隠れていたことにM谷さんが気付いたおかげで、最後のS木さんは下りずに済んだ。全員降りてロープを回収してしまっていたらどうなっていたことだろう。岩の上に薄くのった土の壁を苦労して登り返し、隠れた滝を高巻いて過ぎるとロープを使わずに沢に戻れた。このあと川幅が狭く水流の強い小滝が2本続き、私がロープを引いて登った。時刻は17時を過ぎておりあまり濡れたくはなかったが、朝イチの滝で低体温症になったのでカッパを上下とも着込んだ。水流の強さにこらえきれず何度も流されたが、何とか登りきった。登った先にある大きなチョックストーンは空身で腹ばいになってずりずりと這い上がった。ザックをロープで引き上げると、ザック横に差していた釣り竿が流されてなくなっていたことに気がついた。悲しい。

水流の強かった滝

18時20分。ゴルジュ帯を抜けてようやくタープの張れる河原に出た。張り詰めていた体が緩んだ。焚き火とタープは任せて、私は今夜の食事の確保のため沢に向かう。薄暗い中、A部みさんに借りた竿を出すと立て続けに2匹釣れた。すぐに真っ暗になったので2匹で終わり。今夜はフライにした。

出発直後、大岩が挟まった滝の右岸を登る。ホールドの薄い岩をM谷さんが慎重に岩を探りながら登り、支点を作ってロープを出してくれた。ここから降りるのもツルツルで意外に悪く、先に降りたS木さんの設置してくれたお助けヒモで降りたが、A部みさんは降りる際に振られて腿を岩にぶつけて痛めてしまった。

トップで登るM谷さん

この後は大きな岩がゴロゴロした河原を快適に進む。メインの30mの黒滝が近づいてくる。例年だと雪渓が残り、その雪渓の状況によって黒滝の登りも変わってくるという。しかし今年はやはりというか雪渓はなかった。昨シーズンは本当に雪が少なかった。黒滝を間近まで行って見てみるがしぶきだけでビショビショになる。黒滝は岩に囲まれるようにしてあり、周囲の岩は水で絶えず黒く濡れており、その名の通り真っ黒な滝だった。1段目は登れるがその先は登れない。右岸より巻いて懸垂で降りた。その後の沢が二股に別れた後の滝も高巻いたが、見えていた緩やかなルートではなく、最短のスラブから登ったら意外に悪く失敗した。

黒滝の高巻き。後ろはわずかに残った雪渓

やぶ漕ぎは1時間30分ほどだったが傾斜が急で苦労した。想定した1420mから南に100mくらい横に出た。あとは登山道を下るのみだが、登山口から胎内ヒュッテまではバスが出ている。ここから登山口まではコースタイムで3時間。 最終便は16時。 時刻は14時をまわっていたが、 2時間なら行けるかなと判断して私一人で降りてバスをもう一本臨時で出してもらうよう交渉に行った。予想以上の急傾斜と暑さにまいったが何とか16時のバスに間に合い、運転手に17時にもう一便出してもらえないかと交渉したが、人のよさそうな運転手に「そういうのはやっていないんですよね」と申し訳なさそうに言われて、逆に申し訳なくなった。みんなが降りてくるのを待ち、奥胎内ヒュッテまで歩いた。

16時の最終便

足の松沢はこれまでの沢と全然違った。一つ一つ判断していかないと前に進めなかったし、そのためのルートファインディングや多様なロープワークも必要だった。自分には厳しかったけど、すごく興奮したし面白かった。もっと色んな沢に行ってみたいと感じた山行だった。

黒滝前のわずかに残った雪渓にて

期日:2020年8月20日㈭〜22日㈯

メンバー:A部み(L)、T葉(SL、記録)、M谷、S木

コース:8月20日㈭ 

奥胎内ヒュッテ(12時)〜登山口(13時着、13時10分発)〜入渓点(13時20分)〜BP530m地点(16時20分)

8月21日㈮ 

BP(6時30分)〜BP820m地点(18時20分)

8月22日㈯ 

BP(6時45分)〜登山道1450m地点(13時30分着、14時発)〜登山口(17時)〜奥胎内ヒュッテ(18時)

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