沼田・板沢山 雪は呼吸している

2022年3月8日

この山名とタイトルをご覧になって「なんじゃそりゃ」とお思いの皆様。大丈夫です、私も初めはそう思いました。

まずは板沢山が分からない。ネットで山行記録を探してみるが、ほとんど情報がない。なので、地図を見てイメージを膨らませる。

南部の石神峠からだと尾根が複雑だが、今回の奈女沢温泉からの尾根はクッキリと分かりやすそう。距離が短い分、等高線が混んでいるので、傾斜がややキツそうに見えるが、このくらいなら普通の低山だろう。積雪量にもよるけれど、ピストンで5時間くらいで行けるかな…と予測を立てる。

地図上に最初に川が出てくるので、「ここでドボンしたら、即終了だなぁ」などとドキドキしていたら、何てことはない小川で軽々と渡渉。やはり尾根は分かりやすく、雪質も積雪量もほど良く、快適に歩を進める。

途中、段差のある雪溜まりでステップを切ろうと、ガツガツガツと蹴り込んでから乗り込むと、足元が崩れる。踏み固めやすい感じの雪なのに、なぜ? するとGKさんから「あと2~3回、蹴り込みが足りない」とアドバイスをいただき、キックの回数を増やしたら、足元が安定するようになった。

自然林の中、なだらかな斜面でモフモフの雪を堪能していると、GKさん「雪は息をしているんだよ。まるで生き物のように、同じ山の中でも多様に変化する」

周囲を見回すと、雪が風に押し流され、まるで海の波のように紋様を描く。木の風上側には雪が溜まり、風下側はえぐられたように雪の表面がくぼんでいる。同じ場所に立っているのに、雪の量が全然違うことに驚き、歩きやすそうな場所を選びながら進むように心掛ける。

雪は揺らぐ

少し進むと、今度は極端に雪が薄くなり、落ち葉が表れたり、岩とのミックスになったり、凍っていたり。さらに進むと雪の量が一気に増えて、傾斜がキツくなり、登るのに苦労する。疲れて木に寄りかかって一息ついてから、雪壁を蹴ろうとした瞬間、軸足が木からずり落ちて、2~3メートルほど滑り落ちてしまった。無精して、軸足の足場を固めるのを怠ったせいだ。

気を引き締めて登り詰めると、さらに傾斜が強くなり、蹴っても蹴っても足が入らない。良く見ると、雪の下から硬い氷の壁が顔を出した。私ではステップを切ることができず、GKさんが先行してロープで確保してくれて、ようやく突破。GKさんと「これを下るのは危険だから、下山は別のルートにしよう」と決める。

その先も、傾斜が強くて登れない箇所が出てきて、トラバースしようとしたが、今度は雪が緩くて足場がどんどん崩れていくので、ここもGKさんがロープで確保してくれて、なんとか無事に通過。

2か所もロープを出してもらって、ものすごく高度を稼いだ気でいたら、GKさんが「まだ1000mにも届いてないよ」

…え? これから山頂に向けてさらに傾斜が増すのに? それって、登れるの? と怯えていたら、その後、山頂までは快適で楽しい登り。地図で見る限り、山頂直下が一番厳しいはずなのに、それよりずっと下部が核心だったなんて。地図を見るのと、現場で直面する山の状態との落差に戸惑う。

上州武尊山を臨む

山頂に着くと、雪がベッタリと重くなり、明らかに今までとは雪質が異なる。板沢山の北側は、日本海側から国境稜線を経た乾いた雪が積もっていたのに対し、南側は南岸低気圧の影響で関東特有の湿った雪が積もっている。すぐに足裏に雪がブロック状にくっついて、高下駄花魁状態になり、GKさんに爆笑される。

山頂では、立派に成長した雪庇に驚嘆したり、上州武尊山を眺めながら、ゆっくりお昼休憩をして、石神峠に向けて下山。

石神峠までは尾根が入り組んでいるので、地図読みの練習を兼ねて、市境界線を忠実にたどることにする。要所要所で地図とGPSで位置と進行方向を確認。木々の葉が落ちて見通しが良いのと、地面に積もった雪の白さとで尾根筋がハッキリ見えるため、地図と地形の比較が容易にできる。また、「遠くの山を目印にすると良い」と、三峰山を目指すとちょうど石神峠の方向になると教えてもらい、三峰山の形を頭に入れる。

山頂の雪庇

アップダウンを繰り返しつつ緩やかに下っていくと、思いの外、長いルートで、結局、予想をはるかに上回る行動時間8時間。だが、山行が終わってしまうのが惜しくてたまらないくらい、楽しい雪山だった。「雪は息をしている」確かにそう実感できる、雪山の多種多様な側面を見せてくれる山でした。

■メンバー (L)GK、T川

■ルート 奈女沢温泉手前7:30→板沢山12:30→石神峠15:30