2020年6月10日
馬蹄形2日目。小屋の扉を開けたMSさんが悲鳴に似た声をあげた。『うわー! 良いお天気―!』 昨日に引き続きピッカーンの青空だ。梅雨入りが囁かれるこの時期に嬉しい青空だ。しかも、この山域で。
谷川岳とシャクナゲ
朝日を背中に浴び、朝日岳を背に出発。目の前に七ツ小屋山が大きい。笹原の中の登山道がハッキリと確認できる。昨日よりリュックは少し軽くなったはずだが肩に食い込む。黙々と歩きながら自分の体調をチェック。足にも疲れが溜まっている。体内の水分も不足気味。あまりいいコンディションでは無さそうな気がする。
が、この青空、この空気、この景色。元気に歩かなければ。ウグイスの鳴き声が遥か下から聞こえてくる。カッコウの鳴き声も遥か下。“爽やか”という言葉通りの空中の散歩道だ。ゆっくり歩く。七ツ小屋山を過ぎ、蓬ヒュッテ着。
武能岳を目指す。これから行くスカイラインがオキの耳までずーっと見える。アップダウンがかなりある。山・山・山。山に囲まれている。ちょっとサボっていたそよ風が吹き出してくれた。ありがと。元気出るよ。さあ、頑張ろう。
武能岳山頂でわがままを言って大休憩をもらう。しかも山名表示板の日陰を私が独占しちゃった。MSさんごめんなさい。ここで目を閉じてボーッとする。しばしの休憩。うん。大丈夫。元気出た。Let’s go!
次は茂倉岳。登り400m! ガンバレと自分に言い聞かせる。が、昨日の白毛門の急登よりマシ。しかも眺望バッチリだ。更に足元には百花繚乱。コイワカガミはもちろん、ハクサンコザクラ・シラネアオイ・ハクサンイチゲ・ミヤマキンポウゲ・ミヤマリンドウ…。その他私には判らない花々がたくさん。癒されるー。
茂倉山頂から谷川岳
茂倉岳着。オキ・トマ共射程距離に入ってきた。目を移すと、昨日歩いた稜線がバッチリ見える。白毛門は意外に低い。とんがった笠ヶ岳。朝日岳はどっしりと大きいなぁ。清水峠の東電小屋も薄っすらと。さっき越えた七ツ小屋山もまだまだ大きい。隣りに尖った大源太がカッコイイ。明後日行く予定の飯士山も見える。「飯士山、明後日よろしくお願いします」なんて素敵な眺めなんだろ。ここまで来ないと見られない。当然だ。皮肉な(?)事に、私達あちこちで休憩するので景色はバッチリ堪能出来る。嬉しいが、ロープウェイの最終に間に合うかな? でも、急がずゆっくり行こうね。ダメなら田尻尾根を下山しようねと2人の意見は一致する。
歩いて来た稜線
一ノ倉岳付近まで来るとボチボチ人とすれ違う。雪景を巻き、オキの耳までの岩場を登る。もうヘロヘロバテバテ。そしてトマの耳。さすがにトマの耳には人が多い。
ここまで来ればあとは下りのみ。休憩無しで肩の小屋を目指す。ここはもっと人が多い。パスして熊穴沢の避難小屋へ。ロープウェイに間に合いそう。「ねー、お願いがあるんだけど」とMSさん。「帰りにコンビニ寄ってくれない?アイス買いたい」「もっちろん。私ガリガリくんとオレンジジュース買う」「あら、ガリガリくんもいいね。コロッケも買おうかなぁ」食べ物の話で元気が出る。2日間、2人ともあまり食欲がなかった。水分の心配もあったし。スマホに問いかけられた。「下山後何食べますか?」と。
木々の間からロープウェイの駅の屋根が見えた! あー、もう少しだ。リフトが動いてる。あ、リフト乗り場の芝生が見えて来た。わーい!到着! わー、ヤッター! 頑張ったねー。
振り返ると、オキ・トマが見下ろしてくれている。その稜線をたどると白毛門から笠・朝日・清水峠・七ツ小屋山と見えている。さすがに武能岳や茂倉岳は谷川岳の向こう側なので見えない。展望台でその稜線をバックにパチリ!
10年位前に今日とは逆コースで歩いた。人間はバカだから、いえ私がバカなのか、その時の苦しかった記憶はない。湿原の向こうに見えた朝日岳の大きさに感動したものだ。今回の事も10年経ったら楽しかった想い出だけが残るのかな? MSさんと見た景色、花々、でも苦しかった登り、2人で外で食べた(個食)の夕食、雪渓への水汲み、避難小屋の中、そしてMSさんから感じられた静かな暖かい気配り…。2日間バッチリのお天気だった。“谷川日和”だ。
山行中にも感じたが、MSさんの馬蹄形への想いは強かった。それに引っ張られた。1人では出来なかった。仲間っていいなぁ。オバサンじゃない、女子だね。女子会で次はどこに行こうか。
ヤッター!(朝日岳をバックに)
山行日 6月9月~10日
メンバー リーダーMSさん・TN
コースタイム
6/10 避難小屋発5:15-七ツ小屋山6:30-蓬峠(7:30~7:45)-武能岳(8:50~9:05)茂倉岳(11:25~11:35)-オキの耳13:20-熊穴沢避難小屋(15:50~16:00)-天神平駅着15:40
2日間 累積登り2851m・下り2507m
記:TN