平成30年5月12日
「あ! テントがない!」「え? これは?」「これ、フライ」「五人用と三人用を持ってきたのに五人用がない」「ポールとフライはあるんだけど。確認したのになぁ」車の中を探しても無い。三人用を組み立てたが、二・三人用なので、三人が寝るにはきつそう。私だって2人のGさんとの添い寝はしたくないし。「あーあ、H竜っち。私、車で寝るよ」
新潟の新発田まで延々と五時間かけてやっと到着した後のことだった。出だしからのつまづき。やっぱりこのメンバー不安。登山口の二王子神社の駐車場にテントを張ってちょっとだけ寝酒を飲んて就寝する。「リーダー、明日朝は何時起床?」「起きた時」「は?」
翌朝は、七時半出発の予定のところ六時出発。このメンバーなのによく出来たじゃない。えらい。しかし、良かったのは出だしだけ。「昨夜の酒が残ってる」と皆志気が上がらない。S田とさんはお腹の調子が悪いとか。「新発田市民の憩いの山だって。高尾山みたいなもんかな」「えー。こんなに時間と金をかけてきたのに高尾山⁈」「晴れてれば飯豊山が良く見えるらしいけど、薄雲りだねー」「日頃の行いにかかってるよ」体調イマイチと言う割には口が良く動く。大丈夫、大丈夫。
三合目の一王寺避難小屋に到着。下の水場に行ったS田とさんが戻ってきて「可愛いのを見つけたよ。なーんだ」と言いつつ写真を見せてくれた。水芭蕉の群生。凄い。帰り皆んなで寄って見てこよう。
登るにつれて雪渓が出てきた。薄雲りだが、ブナの新芽と残雪とそこを渡る風がとっても気持ちいい。朝、私達より前に出発したトレランの人が走り下りて来た。「もう下りて来たんですか、速い」
新発田の高尾山とは言え、雪渓の急登はある。フーフー言いながら稜線に出ると雪が消えている。と、カタクリ・イワウチワの群落。ショウジョウバカマも咲き、山頂付近にチョウノスケソウも咲いていた。わーい!のんびりと花の写真を撮っているところに、先程のトレランの人が。二往復目の下山。「また来るの?」「今日はこれで終わりです」ふーん。ま、人様々。花、見ないのかなぁ。展望、楽しまないのかなぁ。風、楽しまないのかなぁ。
山頂の手前からは大展望が広がっていた。飯豊連峰が目の前にドッシリ鎮座している。飯豊本山も稜線の奥にとんがっている。避難小屋を越え、いよいよ山頂! 山頂では“青春の鐘”が迎えてくれてた。
青春かぁ⁈私達は老秋? 老愁? 老終?地元の人らしき人が「奥にある飯豊本山まで見えるのは滅多にない。ラッキーですよ。こんなに全体が見えるのはこの時期だけ。大抵ガスってます。山形側からの景色とは全く違う。こんな雄大な展望はここだけ」と説明してくれた。雪は例年よりたくさん降ったが、雪解けが早かったそう。イルカとペンギンの雪形を勝手に見つけた。のーんびりとこの大展望を眺めていたら、あれ? 誰か昼寝してる! コラコラ。
この飯豊連峰に後ろ髪を沢山引かれながら下山開始。前回来た時は右手に日本海が見えたが、今日は霞んでいた。それでも左から飯豊連峰に見守られて歩く。と、ヘリコプターの音に気づく。一週間前に遭難した父子の捜索か? 雪渓に立っていた人が「(前に見える)あれが五頭連峰ですよ」と話しかけてきた。今日は、下から沢筋を上がって捜索するそう。見つかればいいが。
下山はピストン。急な雪渓はバックステップで下り、谷筋の雪渓は夏道で巻く。のんびりと残雪に立つブナと風と花を堪能しつつ、避難小到着。先程パスした水芭蕉を見に水場へ。わー! 沢筋に大群落。まだまだ咲き始めでかわいい。フキノトウも二つみーつけ。水を補給して避難小屋に戻ると、先程見かけた人が「初めてであの水芭蕉を見つけるなんて凄いですね。大抵見落とすんですよ」だって。フフフ。
その後は、何事も無く沢筋を下り、徒渉とも言えない徒渉を二回繰り返し、綺麗な水の流れと共に登山口に戻る。
山自体は難しくもなく、危険な箇所もない山道だった。花の大群落は何処かで見られるだろうが、あの飯豊連峰の大展望は他の所では見られない。驚き癒され得した気分だった。「金と時間をかけてきた甲斐があった」とケチGのH竜さんも宣った。今度は、飯豊連峰に行こう!
メンバー:H竜(L)、S田と、T中た
記:T中た