マルチピッチクライミングー 二子山中央稜をつるべで登る

2020年3月12日

奥秩父二子山西岳Ⅰ峰中央稜は石灰岩のフリーマルチピッチクライミングの比較的登りやすいルートだ。2015年10月20日にK坂さん、I村さん、S田とさんと登った。私はS田とさんにオールリードしてもらい、ロープワークもマルチの意味もあまり理解していない、今思うと本当に情けないクライマーだった。ただただクライミングが楽しくて、気持ちばかりが先行していた時期だった。あれから5年経ち、最近はS木さんと一緒に外岩に行く機会が増えて、ぜひ一緒にマルチに登りたいという気持ちが大きくなり、思い切って「二子中央稜に一緒に行きせんか?」と声を掛けたら、快く承諾してもらえた。T田さん、M谷さんも一緒に。

中央稜は7ピッチ長さ約230mでグレードは5.8、偶数ピッチは比較的登りやすい。各終了点にはペツルの支点が二つある。今回はつるべ(リードとフォローを交替しながら登る)で、S木さんには奇数ピッチをお願いして、私は偶数ピッチを登った。

当日は快晴で暖かい日だったが、朝から強い風が吹いていた。また、登り初めは岩陰なので寒さが染み、岩も冷え切っていた。T田・M谷ペアが先行する。M谷さんは踵の手術をしてからまだ10日目くらいというのに、クライミング中は痛みを感じないと。T田さんは「手が冷たい。冷たい」と言いながら登り始める。

1ピッチ目の核心は以前も問題なく登れたので楽な気持ちで登る。それに終了点のあるバンドは幅があり、お日様が照っていて暖かく、冷えた体にうれしい。

2ピッチ目はやや膨らんだリッジを登る。ぺツルのボルトが打ってあり、間隔はそれほど遠くないので安心してゆっくりヌンチャクをかけられた。

T田さんが3ピッチ目を登っている。

ここはルート全体の核心のクラック。慎重に果敢に登っている。ビレイしているM谷さんは「頑張って」とか「ナイス」とか元気づけるように声をかけている。

下から登ってきたS木さんが次に登り始めた。クラックから左に大きく足を出し、またクラックに戻り、上部で再び左に出てそのまま直上した。T田さんとは異なるルート取りだ。私は前に登った時にはA0(自然物ではなくカラビナなどのエイドを使って登る)で登ってしまったので今回は頑張ろうと、S木さんの登りを真似て登り始めたが、上部で左手の良い手が探せず、クラックの中に戻ってしまった。足はジャミングできたが一手が決まらず、残念ながら今回もA0になってしまった。

 頼もしいパートナーと

3ピッチ目の終了点はテラスになっているので少し休憩をとったが、緊張で食欲がない。水分だけ摂って4ピッチ目を登り始める。中間支点が少ないので、S木さんからカムを貸してもらい、適当な箇所でカムを使い、小ハングを超え草付きのテラスに出た。

6ピッチ目もカムを借りて、左側の凹角目指して、階段状の岩に取りつき、カムを3つ、ピトンにスリングで中間支点を作り、登り切った。7ピッチ目は小石をロープと足で落とさないように慎重に登り、Ⅰ峰の頂稜に到着した。

頂上に来てもまだ緊張がとれないけれど、どうにか無事にテンションもかからず、自分のピッチを慎重に登り、ロープワークも落ち着いてできた。ルート取りも先行者がいたし、S木さんと相談しながらできた。信頼できるパートナーとパーティに恵まれとてもラッキーな素敵なマルチピッチクライミングになった。

この頂上に来るとどうしてもグレー色のヘルメットをかぶったK坂さんと一緒に来た日を思い出す。その日、K坂さんとI村さんはつるべで登ったのだ。西岳山頂でS田とさんが撮った3人の笑顔、特にK坂さんの穏やかな表情の写真は忘れられない大切な一枚になっている。今日の笑顔の写真も忘れられない一枚になるはずだ。

暖かな陽の当たる頂上から眺めると荒々しい両神山、遠くには和名倉山、雲取山や飛龍山、眼下にはもうすぐ春の兆しの木々が萌え始めていた。

10:30登り初め  15:30頂稜

リーダー:S木、T田、M谷、MS