2020年8月1日~3日
関東は長い梅雨がようやく明けたのか久々に顔を出した太陽がかんかんに照っていたが(下山後に知ったがこの日8月1日に出梅した)、八幡平はどんよりとした雲に覆われていた。秋田と岩手の県境にある見返峠を少し下ったところにある畚岳登山口の駐車スペースに車を停め、14時15分に行動を開始した。登山口からすぐ藪を分け入り沢を目指すので、藪の薄そうなポイントを吟味しながら登山道を歩き、登山口から200メートル辺りの地点から藪に入った。背の丈ほどあるネマガリダケを漕ぎ分けながら、藪の凹んだ沢筋を探して進んでいくと、次第に水が染み出す沢の源流を見つけ、登山口から一時間30分ほどで伝佐衛門沢に着いた。時間は4時。当初の計画通りこの辺りで幕営することとした。
登山道を歩くのも束の間、藪に消える
タープを張って寝床も整えた頃、それまで持ちこたえていた天気が崩れ、しっかりとした雨が降ってきた。濡れた薪になかなか火がまわらず、メタの火がすぐに消えてしまう。みんなで必死に仰いだり焚き火に雨があたらないようにふきの葉で覆ったりして、やっとのことで火を熾すことができた。雨は次第に弱くなり夜中のうちに止んだが、焚き火があったおかげで濡れた衣類も乾いたし、暖かいご飯も食べられた。火を見るだけで気持ちが落ち着いた。焚き火があるとないとでは天と地程の差があると思った。
雨が強いので焚火近くにタープを張り替えた
2日目はよく晴れた。今回の行程では大深沢出合の先にあるソヤノ沢を過ぎた辺りから沢が狭くなりゴルジュや滝が連続する大深沢のいわばメインとなるようなので、今日はソヤノ沢の手前まで下ることを目指した。高低差で600メートル、距離にして7キロほどなのでそれほどきつくはないかなと思った。
6時行動開始。沢の中をずぶずぶ歩いても水が冷たすぎず気持ちいい。下るに連れて水量が増していく。少し進むと小さな滝があり、脇にある大きな岩の合間から降りるとプチゴルジュになっていて、その脇からは岩に跳ね返ってシャワーのような水しぶきを上げながら沢に落ちてくる滝があり明媚だった。小さな滝はその後も幾つも出てきたが、何れも難しいところはなく、高巻いたりへつったりして進んだ。一カ所、ロープが必要かと思われた箇所があり懸垂下降できそうなポイントを探していたら、先を行くS木さんがいなくなり、笛を吹いたら既に下に降りたS木さんの姿があった。
滝にて降りられるルートを探す
出発時はよかった天気があやしくなってきた。時間も意外にかかっており思ったほど進めていない。事前に調べた天気予報でも後半から下り坂となっており、雨で増水した場合、明日のソヤノ沢以降のメイン部分は難しくなるだろうと判断し、来た道(沢?)を引き返し、日程を切り上げ明日に下山することにした。辺りを探すと近くに開けた場所があったので今日の寝床にすることにした。時間はまだ9時過ぎ。夜までゆっくり過ごすことにした。
エメラルドグリーンの滝つぼにて釣りをする
さっそく釣りに興じる。初釣りに挑んだ6月の栗子山では、初めてでも餌を付けた針を垂らせば釣れるんだろうぐらいに甘く見ていた私の釣果は当然のことながらゼロだった。今回は己の慢心を反省し、謙虚な気持ちで一匹釣ることを密かな目標にしていた。前回は枝に糸を引っかけまくり沢山駄目にしたので仕掛けもたくさん作ってきた。滝壺に竿を投げ入れ、イワナがかかるのを気長にゆっくり待とうと思ったのも束の間、竿を持つ手に初めての感触が伝わってきた。一瞬よく分からなかったが、イワナが食いついていることがすぐに理解でき、夢中でイワナに引っ張られる竿を上げると、やっぱり木の枝に糸が引っかかりイワナが宙ぶらりんになってしまった。回収に手間取りスマートには釣れなかったが、一匹釣ることを目標にしつつも本当に釣れるのか自信がなかったので、釣れた時は本当に嬉しかった。
マイファーストイワナ
最終的にイワナは全員で8匹釣れたので一人2匹ずつ食べられた。一匹はシンプルに塩焼きにし、もう一匹は、アルミ皿に刻んだにんにくとしょうがと鷹の爪とともにシシトウを添え、オリーブオイルをひとまわししてホイル焼きにした。どちらもたまらない美味しさだった。この日はA部みさんの68歳の誕生日だったので、エビスビールで乾杯し、一番大きなイワナを食べてもらった。
翌日は下山するのが惜しいくらいの快晴だった。しかし下り坂予報なので晴れているうちに戻りたい。6時30分行動開始。傾斜が緩いため軽快に登ることができ、3時間かけて下った道を1時間強で入渓地点まで戻ることができた。残るは稜線への藪こぎのみ。初日もいいラインであったと思うが、最短で稜線まで上がる道を地図とにらめっこして、経路を修正して登る。初日の藪こぎが大変楽しかったのでトップで登らせてもらう。段々枯れていく細い沢筋を身をかがめながら登り、まずは斜面の途中にあるフラットな地点を目指す。登っていくと突然視界が開け、ぽっかり開いた水芭蕉の群生地に出た。地図記号では周囲が針葉樹なのにそこだけ荒れ地マークとなっていて、あまり信用せずに登っていたが本当にここだけが草原となっていて、まるで別世界のようだった。あまりに気持ちいいので小休憩。
天国のような草原でしばし休憩
ここからが本格的な藪こぎ。ルートを再確認する。硬い笹を漕ぎ分け踏みつけずり落ちないようにする。全く前が見えないのでコンパスでこまめに方角を確認する。なるべく薄いところを登る。途中、まだ生温かそうな熊の糞があり、藪の中で熊とばったり出くわしたらいやだなと恐れつつ、獣が通るのだから薄いところを歩けてるのかなとも思った。
藪の先から人の声が聞こえ、稜線が目の前にあることが分かり、最後は勢いよく稜線へ戻った。藪こぎを終えた達成感と登山道に戻った安心感をいっぱいに感じ、みんなでハイタッチした。計画は完遂できなかったが素晴らしいメンバーとともに登れて大変充実した山行だった。ありがとうございました。
メンバー:A部み(L)、S木(SL)、M谷、T葉
コース
8/1:畚岳登山口14:15~1250m地点16:00
8/2: 1250m地点6:00~1000m地点9:00
8/3: 1000m地点6:30~畚岳登山口11:45
※帰りに藤七温泉
記:T葉