谷川;湯檜曽本谷登れる滝 明るい沢

 

山行実施日;2012,07.27-29
参加メンバー;Sh.S、Ru.T、Sa.H、G2

帰宅すると、新潟から桃が届いていた。毎年、送っていただいているのだが、届くたびにお元気に過ごされているのだろうと、当時のことを思い出される。それは、5年前のこと。私が朝日連峰の三面川岩井又川畑沢に単独で入渓したときのことだった。新潟の北に位置する村上から三面ダムにタクシーで、三面登山口に向かった。奥深いところで、一度入ったら西朝日岳を越え、山形に出るしかないところだ。引き返すということは、かなりの困難があるので、覚悟をして臨んだ山行だった。タクシーを降り、1時間ほど登山道を歩き岩井又川の入渓点に近づいたとき、一人の方が大木の近くで横たわっていた。理由を聞くと、山中間の供養にと一人で入山し足を滑らせて足を折ってしまったとのことだった。人がほとんどはいることのない登山ルートなので、人に会うこともなく、2日が過ぎていたかと思う。辛うじて私と出会うことができ、救助することができたのだ。私も単独山行をしていたので、人ごとではなかった。それから、何かあったらと思い、無線の免許を取得して山行には無線機を持参している。今回、岩ちゃんが足を滑らせて股関節を打撲したこともあり、無事に帰ってくることができてよかったと、改めて実感した。

7月27日(金)それぞれの仕事を終え、2台の車が別々に土合をめざして車を走らせた。我々は北本を20時半に出発した。土・日の谷川は雷雨がある予報なので、新潟への転進も迷ったが、とりあえず土合に向かった。土合の駅に近づいたところで大雨となった。ちょっとした位置の違いで雨が降っているようだ。いわちゃんの車が先に着き、まもなく我々も到着する。ちょっと小降りになったところで、駅の中に入り、入山祝いをしながら、今回の山行について検討した。いわちゃんと中ちゃんは今年初の沢となる。私は雷が怖いので、転進もありかと思っていたが、中ちゃんの「行きましょうよ」の一言ですっきりと、実行することに決まった。メンバーは、ルリちゃんとHさんが加わった5名での沢だ。Hさんとは昨年の船形山笹木沢が敗退となったので実質的に同行する初めての山行だが、経験が豊かなので安心感がある。

さて、湯檜曽本谷はこれまでも計画しながら実施できなかった沢である。今回も、3連休に今早出川のガンガラシバナを計画しながら、天候が不安定のため実施できずにいたのだ。先週も私の家の都合で沢に行けず、ようやく来ることができたというわけである。この沢は、人気の沢であるので、8月になると人が多いだろうと思い、雪渓が心配されたが来ることにしたのだ。

7月28日(土)天気は薄い雲があるものの晴れていて気温も高い。車を白毛門岳登山口に置き、湯檜曽川沿いの散策路を歩き出す。ブナの大木が歓迎してくれる。対岸には、すっきりと伸びたゼニイレ沢があり、監視小屋の脇の新道を進む。林道が細くなり、ぬかるみに足が取られたあと武能沢に出た。靴を履き替え湯檜曽川に下る。あれだけ広かった湯檜曽川がいっきに絞り込まれた魚止め滝がスタートである。魚止め滝を快適に登り、奥の滝を巻くとしっかりした踏み跡だ。さすがに人気の沢である。その後は、雪渓が大歓迎をしてくれた。次々に雪渓が出てきて緊張感がある。十字峡の手前、ウナギ淵には大きな雪渓がかかり水も濁っていた。上を登って進むと十字峡である。濁った水は大倉沢から大量に流れ込んでいた。あまりの濁りだったので鉄砲水を心配したが、本流沿いはきれいになりほっとする。狭くなった谷には薄い雪渓や崩れた雪渓がかかり、どきどきしながらルート工作をして進む。抱き返り滝2段20mはザイルを出した。Hさんは、雪渓の間に次々と出ている手ごろな釜を持つ滝に心が躍るようだ。磨かれた岩に果敢なトライで釜にはまり溺れそうになりながら楽しそうだ。3条10m滝を越えると七ッ小屋沢の出合いである。右から落ちて入ってくる沢が本流だ。岩がつるつるしている。すると、いわちゃんが2mぐらいの滑り台状の岩で足を滑らせ股関節を打った。かなり痛そうだが、少し休んで先に進むと足がふらつく。安全を考えて七ッ小屋沢の出合いで幕を張ることにした。時間は13時ぐらいである。ちょっとした高台の藪を開くといい幕場になった。たき火を準備し、タープを張って乾杯だ。いわちゃんの硬い表情もゆるんできた。午後から降るといっていた雨や雷もなく、実に快適なビバークである。夜9時ごろ、周りでは雷の響きが聞こえてきたもののわれわれのところにはこなかった。

7月29日(日)上空は今日も晴れ。いわちゃんは、気持ち的に不安があるようだが、打ち身は大丈夫とのこと。遡行変更も考えたが、七ッ小屋沢を登って蓬峠から土樽に降りても車の回収なども考えるとかなりの時間がかかるので、歩けるならば続行することにした。その後も、二俣までは、ザイルを出しながらも登れる滝が多く、思い思いに登っていく。しかし、巻きや大滝の登り方については、ていねいに確認をしながらルート工作をしていくことの大切を感じさせられた。二俣に12時近くなり、思ったより時間がかかった。今日こそは雷が来るのではないかと心配して空の様子をうかがう。積乱雲が見られ、14時ぐらいには降られるかとドキドキしながら進む。二俣からは遠くに稜線と見ながらところどころに残る雪渓を交わしながら河原を行く。奥の二俣辺りでガスがかかってきた。踏み跡を辿るとルンゼから藪へ、草原状の台地、そして朝日岳のピーク脇の木道に飛び出した。みんないい顔をしている。空は時折雲が切れる。雨はなさそうだ。とにかく稜線に出られて安心をする。ぼちぼち靴を履き替え出発。しかし、ここからが長い。歩いてきた谷を覗き込みながら笠ヶ岳を目指す。稜線上は色とりどりの花が咲いて美しい。ときより吹く風が気持ちよい。ようやく17時に笠ヶ岳だ。登山道は南西方向から北に向かう。多少のアップダウンがあり、白毛門岳から一気に下る。松ノ木沢ノ頭で19時となり頭電を出す。空には薄雲をかぶった月が出ているが、湯桧曽川本谷周辺は雷が鳴り続いている。我々の上空は高気圧があるようだ。ロープウェーイや土合駅の電気は見えるもののなかなか登山口に届かず、ぼーっとしてくる。21時半にようやく駐車場に着いた。言葉少なく、固い握手を交わし帰路についた。全員が無事下山できて本当によかったと実感した。

ちょうど、『山の本』春号の特集“我が心のふるさとの山”の中に鷹觜勝之「私の好きな谷川岳」と題して谷川への思いが綴られていたところを読んだばかりだったので、とても楽しみにしていたが、私にとっても心に残る1本の沢となった。山行は一つ間違えれば、大変な事故となることもあるが、危険を回避しつつ自然と対話し、自分の力を試してみることは実におもしろい。

 私は命をかけるほどの山を登っていたわけではないが、滝を登るときでも、雪渓を潜るときでも、もしかしたらというドキドキを感じる。それがワクワク感でもあり、重いザックに膝を笑わせながら続けてきた。今思えば、登り始めた当時は、私もはしゃぎ回ったり、緊張で顔をこわばらせたりしていたように思う。当時、一緒に登っていた人たちはどうのように受け止めていたのだろうかと思い返す。緊張感とともに、自然の中にいる自分の存在が、新たな世界の扉を開く沢の魅力でもあり、どんどん引き込まれていった。その後は、単独遡行をし、再び仲間を求めるようになり、一緒に同行してくれる人たちが増えてきた。沢の魅力は、それぞれが感じ取り、そのスタイルも決めていけばよいことだが、基本は自己責任であり、一人ひとりが歩くルートからさまざまな行動の判断を下してけることが沢登りの醍醐味だと思う。そして、集団での山行は、お互いに危険性を回避して安全な山行を追求していくことは当然であり、わずかな疑問や意見でも自由に出し合えることも、そのおもしろさではないだろうか。お互いの力量を理解し、なおかつ、行動を決定する判断力と、すばやい行動がとれる力量が大切であると感じた。一人ひとりの技術の向上と山に対する理解・対応力、集団の柔軟性と統率力が必要なのだろう。  (Sh.S記)

ルート;白毛門岳登山口~武能沢出合~湯檜曽本谷~朝日岳~白毛門岳~駐車場

日程;7/27(金):20:30北本駅-22:30土合駅BP
7/28(土):5:50BP-6:00白毛門岳登山口~7:35武能沢~8:06本谷入渓~
9:45十字峡~12:35七ツ小屋沢出合~13:00ちょっと先で引き
返し出合の高台でBP
7/28(日):6:45BP~9:50m大滝~11 :55二俣~14:50登山道~
15:30朝日岳~21:25駐車場~24:25大宮駅