長釣尾根から日白山へ

緊張しながらも魅力的な尾根歩き

前泊の越後湯沢除雪センターには、二十台くらいの車が駐車していたが、室内を利用したのは、私たちパーティーのみ。静かに飲んで、静かに就寝した。翌朝早朝、朝食をさっと済ませ出発。上越線高架下付近の道路脇に駐車して、林道歩きを開始した。ゲートは閉まっていたが、林道には雪は無く、道路脇には除雪された1~2m高さの雪が積まれていた。毛渡沢沿いに約2.6km歩く。道の端には、黄緑色の柔らかそうなフキノトウが沢山顔を出していた。途中、枝沢からの雪解け水が勢いよく流れている。支えなしでは渡れず、れ、ストック2本でバランスを取りながら渡渉を試みた。流れの中にストックを刺すと水の抵抗を感じるが、どうにか安全に渡ることができた。

長釣尾根のとりつきを探すのに少し手間取ったが、加藤さんが736m標高付近の橋を発見して安心した。いよいよ尾根へのとりつきだが、急登とやぶで簡単には登れず、右側から巻きながら登り口を探して尾根に乗った。低い木立の中にはかすかに踏みあとがある。薄ピンク色のイワウチワの花も咲き始めている。尾根は南西方向に徐々に高度を上げていく。雪面は締まりアイゼンで歩きやすい。急斜面の登りは芝倉沢で覚えたがに股歩きが役に立つ。恵まれた天候の中、足元ばかり見ないで、周囲の山々を眺めながら、一歩一歩私なりのリズムで登ってゆく。西方向に尾根が回り始め、行く手右側には日白山の山頂やタカマタギが、左側には二居俣ノ頭が見え始める。その先は平標山の尾根に続いているはずだが、歩いている最中は余裕なく確認できず。途中、なだらかなナイフリッジに差し掛かる。尾根の右側は急な斜面、左側も灌木と雪の急斜面である。ピッケルを刺して登れないこともないが、安全を優先して灌木側を巻いた。登ったのち後ろを振り返り、「帰り道には下りたくないですね」と加藤さんとうなずき合う。行き先に山頂が見え始め、その山頂に登山者が見える。加藤さんが下山ルートの情報を得ようと山頂に急ぐ。私は4時間を費やしやっと山頂に着く。山頂には新潟長岡からいらした男女二人連れの登山者が休んでいた。誰もいないと思って登ったが、私達の姿が見えたので、待っていたとのこと。女性は私と同じように汗びっしょりだ。3月に二居から登った山頂とは様相が変わっていて、ブッシュが多く出ている。360度の周囲の景色は変わらず、仙ノ倉山、平標山、茂倉岳、一ノ倉岳、谷川岳が眺められる。二週間前に登った谷川岳にカッコよさと愛着を感じる。

下山は当初の計画のタカマタギから棒立山は断念し、東谷山経由二居峠ルートに変更した。雪が割れて、ところどころブッシュをかき分け、かき分け下山する。先行のお二人が、東谷山からのルートを誤り、こんな急坂だったかしらといぶかしく思いながらも後についていき、100m登り返しをした。 違うなと思ったら、自分でしっかり確認しなければと大いに反省した。二居峠までは、階段状の東電の作業路を下り、林道に出た。林道にはまだ雪が残っているが、道の脇には、芽吹いたフキノトウがいっぱいだ。林道の先は、中部ブロックの雪山山行の際、テントを張った平地だった。雪に埋もれていた東屋もすっかり姿を現している。下山後、長岡からの登山者の男性に三国街道から湯沢、土樽、林道入り口まで送っていただいた。私は彼らが摘んだフキノトウもいただきさらに感謝である。今年の残雪登山は、谷川岳を中心に、白毛門、芝倉沢から一の倉岳、小出俣山、阿能川岳、日白山二居峠と今回の長釣尾根、会津の燧ケ岳、窓明山と充実していた。どの山も忘れられないが、今回の長釣尾根は下から眺めても上から眺めてもどこから見ても美しい尾根であった。(L:K藤・S田)四月三十日  (記 S田)

 

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