湯河原 幕岩 悟空スラブ・マルチの魅力

2022年1月3日

2度目の悟空スラブ。だけど前回は3人パーティの真ん中で登っただけ。要は美味しいところだけ、ちょっとつまみ食いさせてもらったに過ぎない。仲間の一人がしきりに「リードをさせてください」とリーダーにお願いしていたっけ。あの時は意味が全然分からなかったけど、今になって彼女の気持ちが痛いほど分かる。私もリードがしたい!!!

マルチピッチへの道のりは何故かとても遠かった。クライミングジムを利用してシステムの練習はすれど、実際に岩場で使ってみないことにはイメージがわかない。平日休みの私は、なかなか皆さんとの都合が合わない。何より、一度悟空スラブを経験している私は、先輩に「(初心者用の簡単な)悟空スラブについてきてもらえませんか」とお願いすること自体気が引けた。だからこそ、湯河原幕岩到着の朝は、とても緊張していた。せっかく時間を取っていただいたのに、へまをしてはいけない。時間がかかってはいけない!

先に幕岩に到着していたリーダーから「アップするなら今だよ」とお声がかかる。急いで支度をする私。となりで「天気が怪しいから早く登りに行こう」という声がする。急がなきゃ。えっと、ギアは何をもっていけば良いかな。フリーの時はなるべく余計なものをもっていかないようにと言われているのを思い出す。だけどその習慣はマルチでは命取りになることが後に判明。(結局、環付きが足りず一つお借りすることに)前回別のコース(城山西南カンテ)に行った時はガイド講習。その時は空身でロープを背負うだけの格好だった。だからマルチピッチとはそういうものだと思っていた。当然私は空身にロープを背負う格好。だけど他3名はアタックザックを背負っていた。あれ? なんか違う。とにかく他の3人と違うことにとまどい、早くしなきゃと焦っている私に、Y城さんが「ゆっくりでいいよ。忘れ物を取りに行って来たら?」と声をかけてくださった。その言葉にほっとして、行動食を取りに一度ザックが置いてあるところまで戻った。

そのような訳で、今回の核心は取りつきまでの精神面だったような気がします。山というのは、ただ登れれば良いだけではなく、日頃から行動を共にして、相手が何を考えているのか、どういう登山スタイルなのか、性格は? 相手の足りない部分をどう自分が補えるのか? など、山以外でのことを把握しておき、お互いに集中できる精神状態を保つことがとても大事なのだと改めて思いました。

無事に取りつきに到着。私とY城さんパーティが先行、K池さん&T川さんが後からついてくる形となりました。後ろのパーティにも迷惑をかけないように、とにかく早さと正確さを意識。支点構築は1分半で! よし!

滑らず落ちずは大前提。ロープを繰り出す早さに注意。逆にたるませすぎても危ない! 相手の動きをよく見て。見えないところは心の目で見ること。50メートルのダブルロープは重い。登るより、ロープを引く方が疲れるよなぁ…。

「ロープが良く流れるように中間支点を長めに取るところなども考えてみてね」

「次に上る人のことを考えてカラビナの方向を決めないとね」

「セルフはビナに架けても最悪大丈夫だけど、〇✖△□だから、ここ(スリング)にかけた方が良いよ」

「私だったら上の木にセルフを取って、下の木に支点を作るけどね」

Y城さんから頂いたたくさんのアドバイスは、頭の中の引き出しのどこかに入っているはず。いつでもすぐに取り出せるところに整理しておかなくちゃ。最終ピッチも無事に登り切り、いざ懸垂下降。ロープをほどく順番は? どっちから輪っかにロープを通せば良いんだっけ? 常に次の行動を考えながら、予測できる事態を想像しながら手を動かす、この感じが好き。間違えた時はすかさずY城さんからの愛のダメ出しが飛んだ。

今回、Y城さんが『繰り出し懸垂』というものをやって見せてくださった。懸垂下降1ピッチ目はフォローで降りるも、2ピッチ目に「繰り出し懸垂で降りてみる?」とお声がかかる。何でもすぐに飛びつく私。簡単に教えていただき、見様見真似でやってみるも、途中3mも下降しないうちにロープは絡まりぐっちゃぐちゃ!!結局ロープを繰り出すどころか、団子をほどきながらの懸垂下降に。にやにやしているリーダー。くっそー! 程なくしてT川さんがきれいにロープを繰り出しながら懸垂下降してきた。私も格好よく繰り出し懸垂できるようになりたいなぁ。練習あるのみ!

今回貴重なお時間を頂いて悟空スラブにお付き合いいただき、また様々ご指導を頂きまして本当にありがとうございました。今回の経験と反省点は必ず次の機会に活かせるよう、復習をしようと思います。大寒波の影響で雪山では近年まれにみる豪雪を楽しんでいますが、湯河原はとても暖かく、雨女が二人いたおかげか日頃の行いか、気持ちの良い晴天に恵まれました。悟空スラブ最終点から望む大島、初島がとても美しく、このような景色を堪能できるのがマルチの魅力の一つなのでしょうね。

■メンバー

LY城、K池、T川、N内

4人パーティでマルチピッチクライミング

記:N内

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